【コラム】161円の円安、2度目の為替介入はあるのか? ― 介入と日銀利上げの関係を考える

コラム

ドル円が161円台で推移し、政府が「防衛ライン」としてきた160円を上回ってきました。先日のコラムで「4〜5月に過去最大11.7兆円の円買い介入があった」という話に触れましたが、ここまで円安が進むと、気になるのは「2度目の介入はあるのか」「口先介入はどうか」、そして「日銀の利上げとはどう関係するのか」という点です。今日は、私たち長期投資家の目線で、このあたりを整理してみます。

おさらい:4〜5月の介入は「過去最大」だった

政府・日銀は4月末〜5月にかけて、合計11.7兆円という過去最大規模の円買い介入を実施しました(4月30日が口火)。「1ドル=160円」を防衛ラインに設定していたとみられます。ところが、これだけ投じても円安の流れは止まらず、ドル円は再び160〜161円に戻ってきました。介入は流れを一時的に止めただけ、というのが実情です。

まず「口先介入」の可能性 → かなり高い

口先介入とは、実際にお金を使わず、当局の発言だけで相場を牽制すること。「投機的で急激な動きには断固たる措置をとる」といった警告がこれにあたります。

防衛ライン160円を超えた今、当局がこうした牽制を強める可能性は高いと考えます。理由は、実弾介入に使えるドルの手持ちには限りがあること。だからこそ政府は、できるだけ実弾を温存し、まず言葉で動きを止めにかかるのが基本戦略です。実際、4月末にも財務相らが強い牽制発言を行っています。

「2度目の実弾介入」はあるか → 条件つき

ここがよく誤解されるところですが、当局が見ているのは「円安の水準」よりも「動きのスピード」です。同じ161円でも、

  • じわじわ進む円安 → 介入は出にくい(今はこちら)
  • 1日で2〜3円も動くような急伸 → 介入の可能性が高まる

つまり、162〜163円へ一気に飛ぶような場面では2度目があり得ますが、今のような緩やかな円安では、すぐの実弾介入は出にくいとみています。加えて、すでに11.7兆円を投じて効果が限定的だった経験があるため、当局も介入の乱発はためらうはずです。

本質はここ:介入は「時間稼ぎ」、日銀利上げが「本丸」

そもそも、なぜ円安が進むのか。最大の理由は日米の金利差です。アメリカの金利が高く、日本が低いままだと、金利の高いドルが買われ、円が売られます。

ここが重要です。為替介入は、この金利差そのものを変えるわけではありません。だから効果は一時的で、「時間稼ぎ」にしかなりません。円安を根本から止めたいなら、金利差を縮める必要があり、その手段が日銀の利上げです。実際、過去最大の介入でも止まらなかったことで日銀への利上げ圧力が高まり、日銀は6月に政策金利を1.00%へ引き上げました。これは「介入(財務省)」と「利上げ(日銀)」の政策協調の表れと言えます。

整理すると、こういう関係です。

  • 為替介入(財務省):即効性はあるが一時的。手持ちのドルに限りがあり、乱発できない=時間稼ぎ
  • 利上げ(日銀):効果が出るのに時間はかかるが、金利差を縮める根本治療

つまり「介入が出るか」だけを見るのではなく、「日銀が追加利上げに動くか」のほうが、円安の行方にとっては本質的だということです。

私たち長期投資家は、どう向き合うか

では、私たちはこの状況にどう構えるか。私の答えはシンプルです。

  • 介入や為替のタイミングは「当てにいかない」。 いつ介入が入るか、円高に振れるかは、プロでも読めません。短期で張るのは私たちの土俵ではありません。
  • 円安・円高、どちらでも効くように分散しておく。 円安はオルカンやS&P500などのドル建て資産に追い風、円資産には逆風。両方を持つことで、どちらに振れても極端に困らない形にしておきます。
  • 金利上昇局面は、高配当株の買い場でもある。 先日のコラムで書いた通り、金利上昇でNTTやREITが下げるなら、それは利回りが上がる仕込み場でもあります。

仮に2度目の介入で一時的に円高へ振れても、それで私たちの積立や長期保有の方針を変える理由にはなりません。為替は「向こうから来る波」。乗りこなそうとせず、分散して淡々と積み上げる——それが、こういうニュースの多い局面でこそ効いてくると思っています。

為替を「当てにいかない」私たちにこそ、インデックスの長期保有

ここで、もう一歩踏み込んでお伝えしたいことがあります。介入も金利も為替も「読めない・当てにいかない」と書いてきましたが、その”読めなさ”と最も相性が良いのが、インデックスファンドの長期保有です。

私たちが積み立てているeMAXIS Slim 全世界株式(オルカン)やS&P500は、世界中の(あるいは米国を代表する)企業にまとめて投資する仕組みです。中身はドル建ての資産が多いので、円安局面では円換算の評価額が自然に増えます。でも本当に大事なのは、それを”狙って”買うことではなく、為替がどちらに転んでも、毎月淡々と積み立て続けることです。そうすれば高いとき・安いときをならして買え(時間分散)、円高・円安の波も長い目で平準化されていきます。

為替の先行きは、誰にも読めません。だからこそ、「世界経済は長期的に成長する」という一点を信じて、インデックスを長く持ち続ける。介入や金利のニュースに振り回されて売買するより、よほど再現性が高いと私は考えています。高配当株が「円のインカム(配当)」を運んでくれるのに対し、インデックスは「世界の成長」を運んでくれる。この2つの軸を、為替や金利が荒れても手放さず、長期で持ち続けること——それが、どんな局面でも慌てずにいられる私たちの土台になります。

まとめ

161円・防衛ライン超えで、口先介入の可能性は高く、実弾の2度目は「急伸すれば」条件つきであり得る。ただし介入は時間稼ぎにすぎず、円安を本当に左右するのは日銀が追加利上げに動くかです。私たちは、介入の有無に一喜一憂せず、円のインカムを生む高配当株と、世界の成長を取り込むインデックスファンドの長期保有を2つの軸に、為替に振り回されず今日も淡々と積み立てを続けます。読めない為替を当てにいくのではなく、長く持ち続けることで報われる——それが私たちの選ぶ道です。

免責事項

本記事は筆者個人の見解をまとめたコラムであり、特定の銘柄・通貨の売買を推奨するものではありません。記載した数値は記事執筆時点(2026年6月22日)の情報・報道に基づく概算です。投資判断はご自身の責任において行ってください。

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