ここ数週間、日経平均はアドバンテストや東京エレクトロンといった値がさのAI半導体関連株の値動きに振り回され、一日で2,000〜3,000円規模の乱高下を繰り返しています。米テック企業の好決算で+2,494円と急騰したかと思えば、AI投資への警戒から▲2,566円、一時▲3,100円という日もありました。ソフトバンクグループやキオクシアが1日で1割前後動く場面もあり、「持っていて落ち着かない」相場が続いています。
こういう相場になると、あらためて存在感を増すのが、値動きの荒さとは無縁の高配当・バリュー株です。その代表格の一つが、本日2026年8月7日に2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)決算を発表するKDDI(9433)です。発表前に、いま公表されている数字から「どこを見ればいいか」を整理しておきます。
今回のポイントを先に3つ挙げると、①前年同期の営業利益2,725億円を上回れるか、②2026年5月から利益指標が「調整後」に切り替わり、通期計画の見方そのものが変わったこと、③子会社BIGLOBEで発覚した架空循環取引の後始末が計画にどう織り込まれているか、の3つです。順に見ていきます。
1. 会社概要
KDDI株式会社(東証プライム・9433)は、「au」「UQ mobile」「povo」の3つの携帯電話ブランドを軸にした、NTTドコモ・ソフトバンクと並ぶ国内通信大手3社の一角です。代表取締役社長CEOは松田浩路氏。2026年5月に新しい中期経営戦略「Power-to-Connect 2028」(2027年3月期〜2029年3月期)を発表し、AIが当たり前になる社会を見据えた投資へ舵を切っています。
事業は新しい戦略にあわせて3つに再編されました。

意外と知られていませんが、KDDIは通信会社であると同時に、身近な生活のインフラにも深く関わっています。2024年には三菱商事とともにローソンを非上場化し、折半出資(50%ずつ)で持分法適用会社にしました。投資額は約4,971億円。au PAYやauじぶん銀行といった金融サービスと、全国の実店舗網を組み合わせ、「通信×リアル店舗×金融」で生活圏を広げる狙いです。
もう一つの特徴が、衛星との直接通信サービス「au Starlink Direct」です。米スペースXのStarlink衛星とスマートフォンが直接つながる仕組みで、2024年12月にベータ提供、2025年春から本格提供が始まりました。山間部や海上など、これまで電波の届かなかった場所でもスマホがつながるようになる、世界的にも珍しい取り組みです。
2. 業績推移
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 親会社帰属当期利益 | EPS | 1株配当 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 5兆8,355億円 | 1兆875億円 | 6,554億円 | 161.86円 | 72.50円 |
| 2026年3月期 | 6兆719億円 | 1兆991億円 | 7,071億円 | 183.59円 | 80.00円 |
| 2027年3月期(会社計画・調整後) | 6兆4,100億円 | 1兆2,100億円 | 7,310億円 | 196.29円 | 84.00円 |
前期(2026年3月期)は売上高・営業利益・純利益のすべてで過去最高を更新し、増収増益を達成しました。EPSも183.59円と、中期目標に掲げていた水準を事業成長で実現しています。
ただし、正直に触れておくべき点もあります。前期は2025年5月時点の期初計画(売上高6兆3,300億円・営業利益1兆1,780億円・当期利益7,480億円)に対しては、いずれも下振れて着地しました。原因は後ほど説明する子会社BIGLOBEの不正取引問題で、2026年3月末に業績予想を下方修正しています。それでも前期比では増収増益を確保しており、「期初の目標は外したが、前年からは伸びた」というのが実態です。
3. 決算ポイント(予測)
まず見るべきは「前年同期の営業利益2,725億円」
四半期決算でいちばん素直な比べ方は、1年前の同じ3か月と比べることです。前年1Q(2025年4-6月)の実績は次のとおりでした。
| 項目 | 2025年4-6月(前年1Q)実績 | 前年同期比 | 通期計画に対する進捗率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆4,363億円 | +3.4% | 22.7% |
| 営業利益 | 2,725億円 | ▲1.6% | 23.1% |
| 親会社帰属当期利益 | 1,711億円 | ▲3.3% | 22.9% |
| EPS | 43.01円 | ― | ― |
前年1Qは、モバイル収入や金融・エネルギーなどのグロース領域は伸びたものの、一過性の販促費などの影響で営業利益が前年同期比▲1.6%となりました。今回の発表では、まずこの2,725億円を上回れるかどうかが最初のチェックポイントです。
進捗率にも注目です。前年1Qは通期計画に対して売上高22.7%・営業利益23.1%・当期利益22.9%というペースでした。同じ感覚を今期(調整後ベースの計画6兆4,100億円・1兆2,100億円・7,310億円)に当てはめると、調整後営業利益で2,700〜2,900億円程度(進捗23%前後)が「順調」の目安になります。ただしこれは前年の進捗ペースを参考にした概算で、指標そのものが変わっているため厳密な比較ではない点は割り引いて見てください。
利益指標が「調整後」に切り替わった意味
今回の発表を理解するうえで、いちばん見落としやすいのがここです。KDDIは2026年5月の決算発表にあわせて、大規模な一時損益や特殊要因を除いた「調整後利益」を新しい経営指標に採用しました。その結果、2027年3月期の会社計画は調整後ベースでのみ公表されており、従来方式の営業利益・当期利益そのものの予想は非開示になっています。

つまり今回の1Q発表でも、会社が示す進捗の物差しは「調整後」の数字になる可能性が高いということです。ニュースの見出しだけを見て「前期の営業利益と比べて増えた・減った」と単純に判断すると、指標の違いで見誤ることがあるので注意してください。
BIGLOBE子会社の架空循環取引、後始末は済んだか
もう一つ、今回の1Qで確認しておきたいのが、前期に発覚した子会社の不正会計問題です。KDDIの連結子会社ビッグローブと、その子会社ジー・プランの広告代理事業で、2018年8月から2025年12月にかけて、実態のない「架空循環取引」が継続的に行われていたことが判明しました。関与した従業員2名によるもので、外部への資金流出は累計約329億円にのぼります。
KDDIは外部弁護士・公認会計士による特別調査委員会を設置し、2026年3月31日に調査結果を公表。これにあわせて業績予想を下方修正しました(前期の売上高最大約246億円、営業利益最大約50億円への影響)。前述の「期初計画からの下振れ」の主因はこの問題です。
不正そのものは前期にすでに解明・処理が終わっていますが、再発防止に向けたガバナンス強化の進捗や、今期以降に追加の費用計上がないかは、株主として引き続き確認しておきたいポイントです。今回の1Q決算資料や説明会で言及があるか、注目しています。
4. 通期(2027年3月期)の会社計画
今期は、新中期経営戦略「Power-to-Connect 2028」の初年度にあたります。会社計画(調整後ベース)は次のとおりです。
- 売上高 6兆4,100億円(前期比+5.6%)
- 調整後営業利益 1兆2,100億円(同+5.0%)
- 調整後当期利益(親会社帰属) 7,310億円(同+2.7%)
- 調整後EPS 196.29円(同+6.2%)
- 1株配当 84.00円(同+4.00円)
ここで少し引っかかるのが、調整後当期利益の伸び率は+2.7%なのに、調整後EPSの伸び率は+6.2%と、EPSのほうが大きく伸びる計画になっている点です。理由は自社株買いです。期中平均の発行済株式数は前期の約38.5億株からさらに減る見込みで、利益の伸び以上に「1株当たり」の取り分が増える効果が出ています。株主還元という意味では歓迎できる材料です。
新戦略では、AIが当たり前になる社会(AI前提社会)を見据え、データセンターや海底ケーブルなど「AIインフラ」に3年間で1.2兆円を投資する計画も示されています。通信という土台を守りながら、金融・データ・法人DXといった成長領域に資源を振り向ける方針は、ソフトバンク・NTTと共通する業界全体の流れでもあります。
5. 配当の魅力
高配当株としてのKDDIを語るうえで欠かせないのが、20年以上途切れていない連続増配の実績です。

KDDIは2003年3月期から一度も減配せず、前期(2026年3月期)で24期連続増配を達成しました。配当額は2003年3月期から数えて56倍に増えています。今期の会社予想どおり84.00円(中間42円・期末42円)を実現できれば、25期連続増配という節目を迎えます。
| 項目 | 2026年3月期 実績 | 2027年3月期 予想 |
|---|---|---|
| 年間配当 | 80.00円 | 84.00円 |
| 調整後EPS | 184.86円 | 196.29円 |
| 配当性向 | 43.6% | 42.8% |
| 予想配当利回り | ― | 2.90% |
| 連続増配 | 24期 | 実現すれば25期 |
配当性向は42〜44%台で安定しており、利益の伸びの範囲内で無理なく増配を続けているのが特徴です。ソフトバンク(後述、配当性向76%前後)と比べると余力があり、「利益が多少ぶれても、配当だけは守る」姿勢を数字が裏付けている銘柄だと思います。
6. 類似銘柄との比較
| 銘柄 | 予想PER | PBR | 予想配当利回り | 配当性向 |
|---|---|---|---|---|
| KDDI(9433) | 約14.8倍 | 2.05倍 | 2.90% | 42.8% |
| NTT(9432) | 12.5倍 | 1.26倍 | 3.59% | 42.0% |
| ソフトバンク(9434) | 19.2倍 | 4.01倍 | 3.84〜3.98% | 75.8% |
通信大手3社を並べると、それぞれの性格の違いがよく分かります。
- NTT:PER・PBRとも3社で最も低く、配当利回りは最も高い「割安・高利回り」タイプ
- ソフトバンク:配当性向が高く利回りも高いが、PBR4倍と株価としては最も割高。成長投資への期待込みの評価
- KDDI:PER・PBR・配当利回りともに3社のほぼ中間。配当性向は最も低く抑えられており、増配の余力という点ではいちばん堅実
3社とも「バリュー・高配当株」という括りでは共通していますが、KDDIは3社の中でいちばん財務的な余裕を残しながら増配を続けているポジションだと言えます。派手さはありませんが、AI半導体株のような値動きの荒さに疲れたときに、あらためて評価したくなるタイプの銘柄です。
7. 保有状況
私はKDDI(9433)を保有株数分、保有しています。取得単価は2,296円です。
| 取得単価 | 2,296円 |
| 株価(2026年8月6日終値) | 2,901.0円 |
| 評価損益 | 約 +26.4% |
| 取得単価に対する利回り | 3.66%(今期予想84.00円) |
取得単価2,296円に対して今期予想の84.00円で計算すると、取得利回りは3.66%になります。いま新規に買う人の利回り2.90%より高い水準で、長く持ち続けているぶん受け取り効率が上がっている状態です。連続増配が続く限り、この差はさらに開いていくことになります。
8. NISAとの相性
KDDIは新NISAの成長投資枠の対象銘柄です。相性という観点では、次のように考えています。
- 株価は2,900円台。100株単位だと約29万円が必要で、ソフトバンクやNTTほど手軽ではないが、単元未満株(1株から)を使えば少額からでも積み立てられる
- 年2回(中間・期末)の配当があり、配当にかかる約20%の税金がかからない
- 24期連続増配という実績は、値動きよりも「配当を長く受け取り続ける」ことを目的とするNISA運用と相性が良い
一方で、通信料金は総務省の値下げ圧力や格安SIM・MVNOとの競争にさらされ続ける事業でもあります。「絶対に安全」ではなく、あくまで相対的に値動きが穏やかで配当が読みやすいという位置づけで考えるのが実態に近いと思います。
9. 個人株主としての見解
今回の1Q決算で、私が確認したいのは次の3点です。
- 調整後営業利益が前年同期の2,725億円(従来方式)を上回るペースで進んでいるか
- BIGLOBEの不正取引問題について、追加の費用や再発防止策への言及があるか
- ローソン・金融・エネルギーといった「Personal Growth」領域が、通信本体を上回るペースで伸びているか
冒頭に書いたとおり、いまの相場はAI半導体株の値動きに振り回されがちです。そういう局面だからこそ、「毎日株価をチェックしなくても、配当が淡々と積み上がっていく銘柄」の価値を再確認させられます。KDDIはまさにその代表格で、事業の成長性という意味では通信大手3社の中で突出しているわけではありませんが、配当性向を抑えながら24期連続増配を続けてきた財務規律には安心感があります。
ただし、前期はBIGLOBEの不正取引という「想定外」も経験しました。安定株だから何が起きても大丈夫、というわけではないことは覚えておきたいところです。値上がりを積極的に狙う銘柄というより、相場が荒れたときこそポートフォリオの重しとして機能してくれるかどうかを、今回の決算と合わせて見ていくつもりです。
決算発表後に、実際の数字と照らし合わせたレポート記事を書く予定です。
10. 免責事項
本記事は個人投資家である筆者が、公開情報をもとに自身の記録・整理のためにまとめたものです。特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載した数値は決算短信・決算説明資料・株探・Yahoo!ファイナンス等の公開情報に基づく概算であり、正確性を保証するものではありません。また、本記事は決算発表前に作成しているため、記載内容は予想・見立てであり、実際の決算内容とは異なる可能性があります。投資に関する最終的な判断はご自身の責任でお願いいたします。

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