【決算発表予測】INPEX(1605) 2026年12月期2Q ― 中東情勢が揺らす原油価格、初めての「複数シナリオ」予想

INPEX 1605 2026年12月期第2四半期決算発表予測 1605_eyecatch 決算速報レポート

本日2026年8月7日、INPEX(1605)が2026年12月期第2四半期(2026年1〜6月、いわゆる上期)決算を発表します。決算発表は15:30、決算説明会は16:30の予定です。発表前に、いま公表されている数字から「どこを見ればいいか」を整理しておきます。

今回のポイントを先に3つ挙げると、①中東情勢の緊迫を受けてINPEXが史上初めて示した「複数シナリオ」の業績予想②上期実績が修正レンジ1,800〜2,140億円に届くか③配当108円(据え置き)の先にある追加株主還元の可能性、の3つです。順に見ていきます。

1. 会社概要

株式会社INPEX(東証プライム・1605)は、日本最大の石油・天然ガス開発生産企業(E&P、Exploration & Production)です。代表取締役社長は上田隆之氏。国内外で原油・天然ガスの探鉱・開発・生産を行い、日本のエネルギー安全保障を支える基幹企業の一角を担っています。

主力プロジェクトは次の3つです。

INPEXの主力プロジェクト イクシスLNG・アブダビ原油・アバディLNG
INPEXの利益を支える3つの主力プロジェクト。

特にアブダビ(アラブ首長国連邦)での原油生産は、ADNOC(アブダビ国営石油)との権益によるもので、今回の決算でいちばん注目される「中東情勢の影響」を直接受けやすい拠点です。会社側は「ホルムズ海峡経由ではなく、アラビア湾外からの出荷を継続している」と説明しており、生産・出荷そのものは維持されているとのことです。

原油・天然ガス一本足ではなく、CCS(CO2の回収・貯留)や水素・アンモニアといった「多角化エネルギー」への投資も進めており、脱炭素時代を見据えた事業ポートフォリオの転換を掲げています。

2. 業績推移

決算期売上収益営業利益親会社帰属当期利益EPS1株配当
2024年12月期2兆2,658億円1兆2,718億円4,273億円345.31円86.00円
2025年12月期2兆113億円1兆1,354億円3,938億円330.82円100.00円
2026年12月期(会社予想・5月修正)2兆40億〜2兆2,910億円1兆860億〜1兆3,680億円3,500億〜4,500億円300.95〜386.94円108.00円
※IFRS(国際会計基準)。2026年12月期は中東情勢の不確実性を踏まえ、原油価格・為替の前提にレンジを持たせた予想(後述)。

前期(2025年12月期)は原油価格の下落を受け、売上収益・営業利益・純利益とも前期比で減益となりました。ただし当期利益は2月時点の予想から200億円上方修正しての着地で、それでも減益という、原油価格に業績が大きく左右される会社の性格がよく表れた1年でした。

今期(2026年12月期)は一転、原油価格の上昇と円安を受けて大幅な増益予想に転じています。ただし、その中身は単純な「業績好調」ではなく、後述する中東情勢という特殊要因が大きく絡んでいます。

3. 決算ポイント(予測)

1Q実績1,094億円からの積み上げで見る、上期の着地点

すでに発表済みの2026年12月期第1四半期(1〜3月)実績は次のとおりでした。

項目2026年1-3月(1Q)実績前年同期比
売上収益5,018億円▲6.5%
営業利益2,782億円▲14.1%
親会社帰属四半期利益1,094億円▲13.4%
EPS94.08円▲10.8%
期中平均油価(ブレント)78.38ドル/バレル+4.5%
期中平均為替156.96円/ドル4円40銭円安

1Qは油価が前年より上がっていたにもかかわらず、販売量の減少や単価下落の影響で減益という結果でした。この1,094億円が、今回発表される上期(1〜6月)実績の土台になります。

会社は5月13日、上期累計の業績予想を大きく上方修正しています。

親会社帰属四半期利益(上期累計)EPS
2月時点の予想1,500億円128.71円
5月時点の修正予想1,800億〜2,140億円154.77〜184.01円
(参考)前年上期実績2,235億円186.65円

1Qの実績1,094億円を踏まえると、2Q単独(4〜6月)で706億〜1,046億円を積み上げられれば、修正レンジの範囲に収まる計算です。前年同期(2,235億円)には届かない見込みですが、2月時点の予想(1,500億円)は大きく上回るペースです。今回の発表でこのレンジの中のどのあたりに着地するかが、後半戦(下期)の見通しにも直結します。

なぜ「幅を持たせた」予想になったのか

今回の決算でいちばん特徴的なのは、INPEXが史上初めて「複数シナリオ」形式で業績予想を示したことです。背景にあるのは、中東情勢の急速な悪化による原油サプライチェーンへの影響です。

INPEXの通期当期利益予想 2月時点3300億円から5月修正で3500億〜4500億円のレンジへ
2月時点の単一予想から、5月には「早期収束」「長期化」の2シナリオを示すレンジ予想に変わった。

2つのシナリオの前提は次のとおりです。

  • 早期収束シナリオ(当期利益3,500億円):紛争が鎮静化し、需給緩和などで油価が紛争開始前の水準(通期平均70ドル/バレル前後)に早期に回帰すると想定
  • 長期化シナリオ(当期利益4,500億円):紛争鎮静後も地政学リスクが残り、油価が高値圏(上期86ドル/バレルなど)で一定期間続いたのち、期末にかけて緩やかに調整すると想定

興味深いのは、「紛争が長引くほど会社の利益は増える」という、直感とは逆の構造になっている点です。これは、中東情勢の悪化がINPEXにとってマイナス(生産量の制限やコスト増などで244億〜1,074億円の減益要因)である一方、それを上回るプラス(油価上昇・円安による1,052億〜1,222億円の増益要因)をもたらしているためです。原油の「売り手」でもあるINPEXにとって、油価上昇はプラスに働きやすい、という資源会社ならではの構図です。

ただし、これはあくまで「机上の前提」の話です。中東情勢の緊迫が続くこと自体は、世界経済にとっても、日本のエネルギー調達にとっても望ましいことではありません。会社の利益だけを見て安易に「良いニュース」と捉えるべきではない、という点は個人的に意識しておきたいところです。

4. 通期(2026年12月期)の会社計画

通期の原油価格・為替の前提は、2月時点から次のように大きく見直されています。

前提条件2月時点の予想5月時点の修正予想
原油価格(ブレント、通期平均)63.0ドル/バレル70.0〜83.0ドル/バレル
為替(対米ドル、通期平均)151.0円/ドル154.0〜156.0円/ドル

通期の当期利益は3,300億円→3,500億〜4,500億円へと、下限でも+200億円、上限では+1,200億円という大幅な上方修正です。会社の成長投資見通しは8,000億円(2月時点の8,500億円から一部投資の期ずれで微減)で、イクシスの増強やアバディの探鉱、豪州の陸上鉱区(Beetaloo)取得など、コア地域への投資は計画どおり進捗しているとのことです。

なお、今回発表される2Q決算にあわせて、この通期予想自体がさらに修正される可能性もあります。まずは上期実績がどちらのシナリオに近いペースなのかを確認したいところです。

5. 配当の魅力

INPEXは資源価格に業績が左右されやすい会社ですが、株主還元の方針は明確です。

INPEX1605の1株配当推移 2026年12月期は108円予想で4期連続増配
2022年12月期の62円から2026年12月期予想の108円まで、4期連続の増配が続く。

2025年2月公表の中期経営計画(2025-2027年度)では、「1株当たり年間90円を起点とする累進配当」に加え、機動的な自己株式取得で総還元性向50%以上を目指すという方針を掲げています。2025年度の総還元性向は実績55.4%と、この方針を上回るペースで還元が行われました。

項目2025年12月期 実績2026年12月期 予想
年間配当100.00円108.00円
配当性向30.2%38.1%(前回予想時点)
予想配当利回り3.07%
連続増配3期実現すれば4期
※利回りは2026年8月7日午前の株価3,517.0円で計算。

ここで注目したいのが、通期の当期利益予想が3,300億円→3,500億〜4,500億円へと大幅に引き上げられたにもかかわらず、配当予想は108.00円のまま据え置かれている点です。会社は「業績予想の推移と外部環境の変化等を踏まえて、第2四半期決算以降の株主還元を検討していく」としており、今回の2Q決算で増配や自社株買いの上乗せが発表される可能性も含みとして残っています。配当性向で見ても、上限シナリオの4,500億円が実現すれば配当性向はかなり低い水準にとどまり、増配余地は小さくありません。

6. 類似銘柄との比較

銘柄PERPBR配当利回り
INPEX(1605)10.2倍0.84倍3.07%
石油資源開発(1662)6.8倍0.75倍2.59%
ENEOSホールディングス(5020)8.6倍1.05倍2.54%
※2026年8月7日時点の株探に基づく概算。石油資源開発は国内外で原油・天然ガス開発を行う中堅E&P、ENEOSは製油所を中核とする国内最大手の石油元売り。事業モデルが異なるため単純比較には注意。

石油資源開発(JAPEX)はINPEXと同じ純粋なE&P(探鉱・開発・生産)企業で、規模はINPEXよりかなり小さく、PERも低く評価されています。ENEOSは原油を「掘る」のではなく「精製・販売する」元売り事業が中心で、原油高が必ずしもプラスに働くとは限らない(原料コスト増になる)という違いがあります。「原油価格が上がるとそのまま増益に効きやすい」という意味では、3社の中でINPEXがいちばん分かりやすい資源株だと言えます。

7. 保有状況

私はINPEX(1605)を保有株数分、保有しています。取得単価は1,559円です。

取得単価1,559円
株価(2026年8月7日午前)3,517.0円
評価損益約 +125.6%
取得単価に対する利回り6.93%(今期予想108.00円)

取得単価1,559円に対して今期予想の108.00円で計算すると、取得利回りは6.93%になります。株価自体も取得時から2倍以上に値上がりしており、含み益・配当利回りの両方で恩恵を受けている状態です。ただしこれは、原油価格という自分でコントロールできない外部要因に助けられている面が大きい、ということも忘れないようにしています。

8. NISAとの相性

INPEXは新NISAの成長投資枠の対象銘柄です。相性という観点では、次のように考えています。

  • 年2回(中間・期末)の配当があり、配当にかかる約20%の税金がかからない
  • 4期連続の増配実績と、総還元性向50%以上という明確な株主還元方針は長期保有と相性が良い
  • 一方で業績・配当とも原油価格に大きく左右されるため、値動きは高配当株の中でも大きめ。「安定配当」というより「資源サイクルに乗る高配当株」として位置づけるのが実態に近い

NISAは損失が出ても他の利益と相殺できないため、原油安局面での株価下落リスクは織り込んだうえで、長期の資源サイクル・エネルギー安全保障というテーマへの投資として捉えるのが向いていると思います。

9. 個人株主としての見解

今回の2Q決算で、私が確認したいのは次の3点です。

  1. 上期の親会社帰属利益が修正レンジ1,800億〜2,140億円のどのあたりに着地したか(2Q単独で706億〜1,046億円が目安)
  2. 通期予想がさらに修正されるか、また配当108円据え置きに変化があるか
  3. 中東情勢がINPEXの生産・出荷そのものに、実害としてどこまで及んでいるか(会社は「継続中」と説明しているが、確認しておきたい)

INPEXは今回、日本企業としてはあまり例のない「複数シナリオ」形式の予想を示しました。これは会社の姿勢が誠実だからこそできることだと個人的には評価しています。先行き不透明な時に無理に単一の数字へ丸め込まず、「分からないことは分からない」と幅で示すのは、投資家に対して正直な情報開示だと思うからです。

一方で、この増益・増配の追い風の多くが、自社の努力ではなく中東情勢という「自分ではコントロールできない外部要因」に支えられていることも忘れてはいけません。原油価格はいつか反転する可能性があり、その時にどれだけ利益と配当を守れるかが、この銘柄の本当の実力を測る場面になります。今回の決算は、その意味で「好調そうに見える数字の中身」を丁寧に見ていきたいと思っています。

決算発表後に、実際の数字と照らし合わせたレポート記事を書く予定です。

10. 免責事項

本記事は個人投資家である筆者が、公開情報をもとに自身の記録・整理のためにまとめたものです。特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載した数値は決算短信・決算説明資料・株探・Yahoo!ファイナンス等の公開情報に基づく概算であり、正確性を保証するものではありません。また、本記事は決算発表前に作成しているため、記載内容は予想・見立てであり、実際の決算内容とは異なる可能性があります。投資に関する最終的な判断はご自身の責任でお願いいたします。

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