2026年7月28日15時30分、エスコン(8892)が2027年3月期 第1四半期決算を発表しました。売上高▲43.0%、営業利益▲73.1%、そして経常利益・純利益はともに前年の黒字から一転して損失という、数字だけ見るとかなり厳しい内容です。しかし会社は通期の業績予想を一切変更していません。先日の予測記事で注目していた「1Qの季節的な薄さ」がまさにその通りだったのか、契約の中身も含めて答え合わせしていきます。
1. 会社概要
エスコンは、分譲マンションブランド「レ・ジェイド」や地域密着型商業施設「tonarie」の開発で知られる総合不動産デベロッパーです。住宅分譲だけでなく、商業施設・物流施設・ホテル・オフィスビルなど幅広いアセットタイプを手掛ける不動産開発事業、保有物件から安定収益を得る不動産賃貸事業、AM・PM・マンション管理を担う資産管理事業の4つの事業セグメントで構成されています。電力会社の中部電力(9502)が約51.3%を出資する連結子会社である点も特徴です。

| 証券コード | 8892(東証プライム) |
| 業種 | 不動産業 |
| 決算期 | 3月期 |
| 時価総額 | 約1,102億円(2026年7月28日終値ベース) |
| 主な事業 | 住宅分譲、不動産開発、不動産賃貸、資産管理 |
| 親会社 | 中部電力(9502、出資比率約51.3%) |
2. 業績推移
まず通期の業績推移です。単位は億円、EPSは円。
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | EPS | 年間配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2024年3月期 | 1,188.6 | 190.7 | 165.9 | 100.5 | 105.40 | 48 |
| 2025年3月期 | 1,136.0 | 213.1 | 173.2 | 111.9 | 117.18 | 48 |
| 2026年3月期 | 1,370.3 | 261.0 | 171.9 | 121.9 | 127.31 | 48 |
| 2027年3月期(会社予想・据え置き) | 1,450.0 | 265.0 | 200.0 | 140.0 | 151.42 | 53 |
今期(2027年3月期)は経常利益・純利益とも過去最高を更新する計画です。今回の1Q決算発表と同時に、この通期予想には一切変更がないと会社は明言しています。
3. 今回の決算ポイント
2027年3月期 第1四半期(2026年4月〜6月)の実績です。単位は億円。
| 項目 | 前年同期 | 今回(1Q) | 増減率 | 通期計画 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 175.8 | 100.3 | ▲43.0% | 1,450.0 | 6.9% |
| 営業利益 | 21.8 | 5.9 | ▲73.1% | 265.0 | 2.2% |
| 経常利益 | 8.4 | ▲10.2 | 黒字→赤字転落 | 200.0 | ー |
| 純利益 | 9.6 | ▲7.2 | 黒字→赤字転落 | 140.0 | ー |
①1Qが赤字なのは「想定内」。理由は分譲マンションの引渡しタイミング
減収減益の最大の要因は、住宅分譲事業の引渡し戸数が前年同期の226戸から49戸へ大きく減ったことです。エスコンは今期、分譲マンションの竣工・引渡しを第3四半期に集中させる計画で、1Qはもともと年間で最も薄い四半期にあたります。会社は決算短信の中で「通期の連結業績予想に対しては計画どおりに進捗しております」と明言しており、今回の赤字は「実力が落ちた」のではなく「収益計上のタイミングがまだ来ていない」ことによるものです。

その裏付けとなるのが契約の進み具合です。今期の通期引渡し計画910戸に対し、2026年6月末時点の契約戸数は730戸、契約進捗率は80.2%。前期の同時点(70.7%)を明確に上回っています。決算書の数字だけを見ると悪化に見えますが、水面下の「仕込み」はむしろ前年より順調に進んでいる、というのが実態です。
②経常損失の直接の引き金は「支払利息の増加」
営業利益は21.8億円→5.9億円と▲73.1%でしたが、経常利益は8.4億円の黒字から▲10.2億円の赤字へと、営業利益の落ち込み以上に悪化しました。差の主因は支払利息で、前年同期の12.6億円から16.5億円(+30.9%)に増加しています。エスコンは2026年7月16日に150億円の無担保社債(第3回、5年債)を発行しましたが、その利率は2.796%。2024年発行の第1回債(1.488%)、2025年発行の第2回債(1.917%)と比べても明確な金利上昇トレンドが読み取れます。高格付(JCR「AA-」)を武器に低コストで資金調達できてきた会社ですが、その調達コストにも金利上昇の波が及び始めています。なお、前期の重荷だった持分法投資損失は1.3億円→1.1億円とやや縮小しており、この点は予測記事で注目していた通り改善方向でした。
③セグメント別の状況
| セグメント | 売上高 | セグメント利益 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 住宅分譲事業 | 41.8億円(▲62.3%) | 6.4億円(▲66.3%) | 引渡し49戸(前年226戸)。契約進捗率80.2% |
| 不動産開発事業 | 8.1億円(▲38.7%) | 2.5億円(▲23.8%) | 主要な収益不動産売却は2Q以降に予定 |
| 不動産賃貸事業 | 40.6億円(▲5.8%) | 17.3億円(▲16.2%) | 前期の物件売却推進による賃貸物件数減少が影響 |
| 資産管理事業 | 4.9億円(+0.3%) | 2.8億円(+10.0%) | AUM増加・利益率上昇で唯一の増収増益 |
不動産開発事業も「収益不動産の売却減少」で減収減益ですが、こちらも主要な売却案件を2Q以降に予定しているための一時的なもので、住宅分譲事業と同じ構図です。安定収益源であるはずの資産管理事業だけが唯一の増収増益となりました。
4. 財務面の変化
総資産は5,067億円(前期末比▲31億円)とほぼ横ばいですが、中身には変化があります。現金及び預金が629億円→391億円(▲238億円)に減少した一方、将来の引渡し・売却に向けた「仕掛販売用不動産(在庫)」が2,808億円→3,025億円(+215億円)に増加しました。これは翌四半期以降の収益計上に向けた「仕込み」が進んでいることを意味します。この仕入れを支えるため有利子負債が140億円増加し、自己資本比率は17.0%→16.3%へやや低下しました。不動産デベロッパーとして特別高い水準ではありませんが、借入を活用した事業モデルである点は引き続き意識しておきたいところです。
5. 配当の魅力

配当については、今回の1Q決算発表でも通期予想53円(前期比+5円、+10.4%)に変更はありませんでした。期末配当のみで中間配当は設定していません(会社が「年次での業績管理」を採用しているため)。エスコンは2017年から「累進的配当政策」(前年配当を下限に、減配は行わない)を導入しており、2024〜2026年3月期の48円据え置きを経て、いよいよ53円への増配が予定されています。配当性向は41.0%→37.7%→35.0%(予想)と低下傾向にあり、利益成長が配当の伸びを上回っている、株主還元に余力のある状態です。
6. 類似銘柄との比較
| 銘柄 | PER | PBR | 配当利回り |
|---|---|---|---|
| エスコン(8892) | 7.7倍 | 1.30倍 | 4.74% |
| 明和地所(8869) | 6.7倍 | 0.53倍 | 4.82% |
| 日神グループHD(8881) | 9.1倍 | 0.44倍 | 5.44% |
数値は2026年7月28日時点の株探に基づく概算です。マンション分譲を手掛ける中堅デベロッパーの中で、エスコンのPBRは1.30倍と明和地所・日神グループHDより明確に高く、市場からの評価は相対的に高い水準です。中部電力という大株主の信用力に加え、不動産開発事業・資産管理事業という高成長事業を併せ持つ収益構造の分だけプレミアムが乗っていると考えられます。
7. 保有状況
筆者は保有株数分のエスコン株を保有しています。取得単価は896円で、2026年7月28日終値1,118円に対して含み益は+24.8%です。予想配当53円に対する取得単価ベースの利回り(取得利回り)は約5.9%となります。
8. NISAとの相性
累進的配当政策のもとで減配リスクが低く抑えられている点は、非課税で配当を受け取れる新NISA(成長投資枠)との相性が良いポイントです。一方で、今回のように四半期ごとの数字が大きく振れる銘柄でもあるため、単月・単四半期の数字に反応して一喜一憂せず、通期計画への進捗(契約進捗率など)を確認しながら長い目で保有するスタンスが向いています。
9. 個人株主としての見解
予測記事で注目していた「1Qの季節的な薄さ」は、経常損失という形で想像以上にはっきり現れました。ただし中身を見ると、契約進捗率80.2%(前年70.7%)という数字が示す通り、事業の「仕込み」はむしろ前年より前倒しで進んでいます。決算書の一番上の数字(赤字転落)だけを見て動揺する必要はなく、会社が通期予想を維持している以上、現時点では計画通りと判断してよさそうです。一方で、支払利息が+30.9%と目立って増えた点は新しい注目ポイントです。同日発表されたヒューリック(3003)の中間決算でも支払利息の増加が経常利益の伸びを抑える要因になっており、不動産デベロッパー全般に「金利上昇の負担」が広がり始めているサインとして、2Q以降も定点観測していきたいと思います。
10. 免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。記事内の数値は決算短信・決算説明資料等の公表情報および各種情報サイトに基づく概算であり、正確性を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任において行っていただきますようお願いいたします。


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