2026年7月28日11時30分、ヒューリック(3003)が2026年12月期の第2四半期(中間期)決算を発表しました。売上高にあたる営業収益は前年同期比+38.8%の大幅増収。一方で営業利益は+7.0%にとどまりました。この「増収の派手さ」と「増益の地味さ」のギャップには、はっきりした理由が3つあります。保有株主として、中身を数字で分解していきます。
1. 会社概要
ヒューリックは、東京23区の駅近を中心に不動産を保有・賃貸する不動産投資会社です。旧富士銀行系の店舗ビルを源流に持ち、「立地の良さ」を最大の武器にしてきました。
2026年6月末時点で、販売用不動産を除いて約250件の賃貸物件を保有・管理しており、賃貸可能面積は約126万㎡にのぼります。この安定した賃料収入がベースにあり、そこに「物件を仕入れて価値を高めて売る」バリューアッド事業、開発・建替事業、さらにホテル・旅館事業(THE GATE HOTEL、ふふ)や保険代理店事業が乗る形です。
| 証券コード | 3003(東証プライム) |
| 業種 | 不動産業 |
| 決算期 | 12月期 |
| 時価総額 | 約1兆4,237億円 |
| 主な事業 | 不動産賃貸・開発・売買、ホテル・旅館、保険代理店 |
2. 業績推移
まず、通期の業績推移です。単位は億円、1株あたりの数字は円です。
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | EPS | 年間配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022年12月期 | 5,234 | 1,261 | 1,232 | 791 | 104.0 | 42 |
| 2023年12月期 | 4,463 | 1,461 | 1,374 | 946 | 124.4 | 50 |
| 2024年12月期 | 5,916 | 1,633 | 1,543 | 1,023 | 134.4 | 54 |
| 2025年12月期 | 7,274 | 1,868 | 1,729 | 1,143 | 150.5 | 62 |
| 2026年12月期(会社予想) | - | 2,100 | 1,850 | 1,210 | 159.34 | 67 |
利益も配当も、きれいな右肩上がりです。なお2026年12月期の売上高だけ「-」になっていますが、これは会社が意図的に予想を出していないためです。ヒューリックは賃貸事業が中心で安定しているものの、販売用不動産の売買動向によって営業収益が大きく振れるため、「現状では予測が困難」として売上高の予想を非開示にしています。利益の予想はきちんと出ています。
3. 今回の決算ポイント
2026年12月期中間期(2026年1月〜6月)の実績です。単位は億円。
| 項目 | 前年同期 | 今回 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 営業収益(売上高) | 3,000 | 4,165 | +38.8% |
| 営業利益 | 750 | 803 | +7.0% |
| 経常利益 | 665 | 708 | +6.4% |
| 中間純利益 | 448 | 499 | +11.3% |
| EPS(1株利益) | 59.06円 | 65.82円 | +11.4% |
ポイント① 伸び率が「段階ごとに」バラバラな理由
この決算でいちばん気をつけたいのが、売上+38.8% → 営業+7.0% → 経常+6.4% → 純利益+11.3%と、段階ごとに伸び率がバラバラなことです。「増収率がすごいから絶好調」でもなければ、「増益率が低いから失速」でもありません。段ごとに、別々の事情が効いています。

売上から営業利益にかけて伸びが縮んだ理由は、増収の主役が「物件の売却」だったからです。会社の説明でも、賃貸収入は「安定的に推移」という表現にとどまり、大きく伸びたのは販売用不動産の売上です。今期はヒューリックみなとみらい(横浜市中区)やヒューリック府中タワー(東京都府中市)などを売却しています。
物件を売れば売却代金がまるごと売上に立ちますが、そこから物件の簿価(仕入れ値)が原価として引かれるため、賃貸に比べると利益率は低くなります。実際、営業利益率は前年同期の25.0%から19.3%へ低下しました。売上の伸びが大きく見えるのは、売却という「見た目の大きい商売」の比率が上がったからで、稼ぐ力が5.7ポイント落ちたという話ではありません。
営業利益から経常利益にかけて伸びが縮んだ理由は、支払利息です。94億円から142億円へ、+50.8%も増えました。借入金の残高は1兆6,652億円(うちSPCのノンリコースローンが500億円)。不動産賃貸業は借入で物件を買うビジネスなので、金利上昇は避けられないコストです。ここは今後も継続的に見ていくべき項目だと思っています。
逆に、純利益だけ+11.3%と伸びが大きくなった理由は税金です。税負担率が34.3%から29.7%に下がりました(法人税等調整額で77億円の戻しが立っています)。つまり純利益の伸びの一部は本業の力ではなく税金要因です。ここを「純利益が2桁増だから好調」と読むと、実力を過大評価してしまいます。
ポイント② 営業+7.0%は、51億円の特殊要因を吸収した数字
もうひとつ、営業利益には見落としやすい要素があります。今回の中間期、ヒューリックは子会社である株式会社リソー教育グループの株価に応じた追加的なのれん償却として51億円を計上しました。会社自身が「特殊要因」と明記しています。

のれんとは、会社を買収したときに「支払った金額」と「その会社の純資産」の差額を、資産として計上したものです。ざっくり言えば「ブランド力や将来性に上乗せして払った分」で、これを毎年少しずつ費用にしていきます(のれん償却)。今回は買収先の株価下落を受けて、その償却を前倒しで積み増した、というイメージです。
大事なのは、これは現金が出ていく費用ではないということ。会計上の数字として営業利益を押し下げているだけです。この51億円を戻すと営業利益は854億円となり、前年同期比では+13.8%相当。表面の+7.0%より、実力はもう一段上と見るのが素直だと思います。
ポイント③ 1Qの「減益」は2Qで反転した
4月に発表された第1四半期(1〜3月)は、営業利益が前年同期比▲2.0%の減益でした。ここが今回の中間決算での注目点でしたが、答えははっきり出ました。

中間累計から1Qを差し引くと、第2四半期(4〜6月)単独の営業利益は491億円で前年同期比+13.7%。売上+32.3%、経常+13.9%、純利益+14.9%と、すべて2桁の増加です。1Qの減益は一時的なもので、上期トータルでは増益に持ち込んだ形になります。
グラフを見ると分かるとおり、ヒューリックは10〜12月に利益が集中する会社です(前期は4Qだけで804億円=通期の43%)。上期の進捗が4割前後にとどまるのは、この会社では毎年のことで、心配する数字ではありません。
セグメント別の状況
| セグメント | 営業収益 | 前年同期比 | 営業利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 不動産事業 | 3,496億円 | +35.8% | 872億円 | +9.4% |
| 保険事業 | 20億円 | +4.6% | 6億円 | +18.8% |
| ホテル・旅館事業 | 315億円 | +13.0% | 27億円 | +1.8% |
| その他 | 393億円 | +107.1% | ▲24億円 | 前年▲0.5億円 |
※営業収益はセグメント間の内部取引を含んだ数字です。
本業の不動産事業は営業利益+9.4%と堅調。ホテル・旅館事業はインバウンド需要で宿泊単価が上がり、営業収益は+13.0%と伸びていますが、新規開業のコストもあって利益は+1.8%と横ばいに近い水準です。
「その他」が営業損失▲24億円と目立ちますが、これが先ほどののれん償却51億円が計上されている場所です。この特殊要因を除けば26億円の営業黒字(前年は0.5億円の営業損失)で、実態はむしろ改善しています。ここは数字だけ見て「赤字部門が拡大した」と誤解しやすいところです。
財務・キャッシュフロー
- 総資産:3兆5,925億円(前期末比+864億円)
- 自己資本比率:26.3%(前期末26.0%)
- 1株純資産(BPS):1,247.52円
- 借入金残高:1兆6,652億円
- 営業キャッシュフロー:+1,557億円(前年同期+471億円)
- 投資キャッシュフロー:▲2,001億円
営業キャッシュフローが前年の3倍以上に増えているのは、販売用不動産(在庫)を売却して現金化が進んだためです。一方で投資キャッシュフローは2,001億円の支出。物件を売って現金を回収し、また次の物件を買って開発する、という不動産会社らしい資金の流れがそのまま出ています。自己資本比率26.3%は決して高くありませんが、借入で物件を持つビジネスモデルとしては例年並みの水準です。
4. 通期予想と進捗
通期の会社予想は据え置きです。上方修正も下方修正もありませんでした。会社は「当中間期の業績は概ね計画通りに推移しており、業績予想に変更はありません」としています。
| 項目 | 通期計画 | 中間実績 | 進捗率 | 前年同期の進捗率 |
|---|---|---|---|---|
| 営業利益 | 2,100億円 | 803億円 | 38.2% | 40.2% |
| 経常利益 | 1,850億円 | 708億円 | 38.3% | 38.5% |
| 純利益 | 1,210億円 | 499億円 | 41.3% | 39.3% |
営業利益の進捗はやや前年を下回りますが、これはのれん償却51億円が乗っている分で、それを戻せば40.7%と前年並みです。経常はほぼ同じ、純利益はむしろ前年を上回っています。10〜12月に利益が集中する会社であることを踏まえると、計画達成のペースからは外れていないと判断しています。
なお、この経常利益1,850億円という計画は、株探の決算速報によれば達成されれば15期連続の過去最高益となる水準です。派手さはありませんが、積み上げてきた実績は相当なものです。
5. 配当の魅力
今回、私がいちばん安心したのはここです。中間配当は33.5円。前年同期の28.5円から5円(+17.5%)の増配となりました。支払開始予定日は2026年9月3日です。年間配当も67円の予想で据え置きです。
| 年間配当(2026年12月期予想) | 67円(中間33.5円+期末33.5円) |
| 前期実績 | 62円 |
| EPS(会社予想) | 159.34円 |
| 配当性向 | 約42.0% |
| 連続増配 | 達成すれば14期連続(2013年12月期から) |
| 配当利回り | 約3.61%(株価1,853.5円で計算) |
年間配当の推移を並べると、42円(2022年12月期)→50円→54円→62円→67円(予想)。この4年間で約1.6倍です。配当性向は42%前後と、無理をして配っている水準ではありません。利益成長に合わせて配当も増えていく、高配当株として理想的な形が続いています。
中間決算のタイミングで配当予想を据え置き、かつ中間配当を計画どおり増額してきたことは、会社の自信の表れだと受け取っています。
6. 類似銘柄との比較
大手不動産会社と比べてみます。数値は2026年7月28日前引け時点の株探・Yahoo!ファイナンス等に基づく概算です。ヒューリック以外は3月期決算のため、2027年3月期の会社予想がベースになります。
| 銘柄 | PER(予) | 配当利回り(予) | 配当性向(予) |
|---|---|---|---|
| ヒューリック(3003) | 11.6倍 | 3.61% | 約42.0% |
| 三井不動産(8801) | 15.0倍 | 2.33% | 約34.9% |
| 三菱地所(8802) | 20.8倍 | 1.20% | 約25.1% |
| 住友不動産(8830) | 15.5倍 | 1.39% | 約21.5% |
| 東急不動産ホールディングス(3289) | 9.9倍 | 3.62% | 約35.6% |
ヒューリックの位置づけははっきりしています。三菱地所や住友不動産が「利回り1%台・PER15〜20倍」でグロース寄りに評価されているのに対し、ヒューリックはPER11.6倍・利回り3.6%台と、明確にインカム(配当)で報いるタイプです。東急不動産HDと並んで、大手不動産のなかでは高配当株として選びやすい2社だと考えています。
ただし配当性向は42%と、比較した4社のなかでいちばん高い水準です。裏を返せば「利益のうち株主に回す割合が大きい」わけで、そのぶん業績が崩れたときの余力は他社より小さくなります。ここは長所と短所が同じコインの裏表になっています。
7. 私の保有状況
私は保有株数分のヒューリックを保有しています。
| 取得単価 | 1,494円 |
| 株価(2026年7月28日 前引け) | 1,853.5円(前日比+18.5円、+1.01%) |
| 含み益 | 約+24.1% |
| 取得単価ベースの配当利回り | 約4.48%(年67円 ÷ 1,494円) |
取得したときの利回りは4.48%。買った当時は3%台後半だったものが、増配を重ねたことで4%台半ばまで上がってきました。これが長期保有の一番の果実だと感じています。株価が上がると現在の利回りは下がりますが、私にとっての利回りは取得単価で固定されているので、増配のぶんだけ着実に上がっていきます。
なお、今回の決算発表は11時30分=前場の引けと同時でした。そのため上の株価には決算の内容はほとんど織り込まれていません。株価の反応が出るのは後場からになります。
8. NISAとの相性
ヒューリックはNISAの成長投資枠の対象です。100株を1,853.5円で買うと約18万5,350円。年間配当67円なら受取配当金は年6,700円です。
通常の課税口座なら配当に約20.315%の税金がかかるので、6,700円の配当に対して約1,361円が引かれ、手取りは約5,339円。NISA口座なら6,700円がそのまま受け取れます。年間で約1,361円の差です。
金額だけ見れば小さく感じますが、これが毎年続き、しかも増配で配当額そのものが増えていきます。仮に配当が今のペースで増え続ければ、非課税のメリットも一緒に大きくなっていく。連続増配銘柄とNISAの組み合わせは、時間が経つほど効いてくる相性の良さがあると考えています。
9. 個人株主としての見解
今回の決算を私なりに一言でまとめると、「見出しの数字は派手、中身は堅実、そして配当は約束どおり」でした。
売上+38.8%という数字だけを見て「すごい成長」と飛びつくのは違いますし、営業+7.0%だけを見て「勢いが鈍った」と失望するのも違います。増収の主役は物件売却であり、増益率が低く見えるのは51億円ののれん償却を吸収しているから。それを除けば+13.8%相当で、1Qの減益も2Qでしっかり反転しました。通期計画に対する進みも例年どおりです。
一方で、気をつけて見続けたい点もはっきりしています。支払利息が94億円から142億円へ、1.5倍に膨らんだことです。金利のある世界に戻ったいま、1兆6,652億円の借入を抱えて不動産を持つビジネスには、確実に逆風が吹いています。今回は本業の伸びがそれを上回りましたが、この関係が逆転しないかどうかは、四半期ごとに確認していくつもりです。あわせて、増収を支えた物件売却は毎年同じペースで続けられるものではない、という点も頭に置いておきたいところです。
それでも、私の結論は変わりません。保有を継続します。中間配当は予定どおり33.5円へ増額され、通期67円の予想も据え置かれました。達成すれば14期連続の増配です。配当性向42%には無理がなく、都心の駅近という資産の質も変わっていません。
決算の日に株価が動いても、私が確認しているのは「配当を出し続けられる会社かどうか」の一点です。今日の決算は、その問いに対して静かに「はい」と答えてくれた内容でした。派手な数字に驚くのでも、地味な数字に落胆するのでもなく、中身を分けて見る。投資は才能ではなく、その選択の積み重ねだと思っています。
10. 免責事項
本記事は筆者個人の保有記録および分析であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載した数値は2026年7月28日公表の決算短信および各種情報サイトに基づく概算であり、正確性を保証するものではありません。投資判断は必ずご自身の責任において行ってください。

コメント