【決算発表予測】ソフトバンク(9434) 2027年3月期1Q ― 6期据え置きから一転、7年ぶり増配の初年度

ソフトバンク9434 2027年3月期第1四半期 決算発表予測 決算速報レポート

2026年8月4日、ソフトバンク(9434)が2027年3月期の第1四半期(2026年4〜6月)決算を発表する予定です。発表前に、いま公表されている数字から「どこを見ればいいか」を整理しておきます。

今回のポイントを先に3つだけ挙げると、①今期は7年ぶりの増配が予定されている初年度②直近の1〜3月期が純利益▲27%と落ち込んで見えること③AIへの先行投資が利益の伸びをどれだけ抑えるか、の3つです。順に見ていきます。

1. 会社概要

ソフトバンク株式会社(東証プライム・9434)は、「ソフトバンク」「ワイモバイル」「LINEMO」などの携帯電話サービスを中心とした国内の通信会社です。2018年12月に東京証券取引所へ上場しました。

まぎらわしいのですが、親会社であるソフトバンクグループ(9984)とは別の会社です。ソフトバンクグループが海外への投資を主な事業にしているのに対し、こちらのソフトバンク(9434)は国内で通信やインターネットのサービスを提供する「事業会社」です。高配当株として個人投資家に持たれているのは、多くの場合こちらの9434のほうです。

グループにはLINEヤフー、ZOZO、アスクル、PayPayなどが含まれ、事業は次の5つに分かれています。

ソフトバンクの5つの事業セグメントと営業利益
ソフトバンクの5つの事業。営業利益は2026年3月期の実績。

営業利益の半分以上を稼いでいるのは、私たちがふだん使っている携帯電話などの「コンシューマ事業」です。ただし成長の伸びしろという意味では、法人向けの「エンタープライズ事業」(今期+20%計画)とPayPayなどの「ファイナンス事業」(同+27%計画)が主役になりつつあります。

2. 業績推移

決算期売上高営業利益純利益EPS1株配当
2023年3月期5兆9,120億円1兆602億円5,314億円11.3円8.6円
2024年3月期6兆840億円8,761億円4,891億円10.3円8.6円
2025年3月期6兆5,443億円9,890億円5,261億円11.0円8.6円
2026年3月期7兆387億円1兆426億円5,508億円11.4円8.6円
2027年3月期(会社予想)7兆5,000億円1兆1,000億円5,600億円11.5円8.8円
※IFRS(国際会計基準)。純利益は親会社の所有者に帰属する純利益。配当は2024年10月の1対10の株式分割を反映した調整後の金額。

前期(2026年3月期)は売上高が初めて7兆円を超え、営業利益・純利益とも過去最高を更新しました。売上は4期連続で伸びており、通信という成熟した事業を抱えながら年6〜7%のペースで伸び続けているのは素直に評価できるところです。

今期(2027年3月期)の会社計画は売上高7兆5,000億円(+6.6%)、営業利益1兆1,000億円(+5.5%)。ただし純利益は5,600億円で+1.7%と、伸び率がぐっと小さくなります。この「ねじれ」の理由は後ほど触れます。

3. 決算ポイント(予測)

まず見るべきは「前年同期の営業利益2,907億円」

四半期決算でいちばん素直な比べ方は、1年前の同じ3か月と比べることです。直近2年分の四半期実績を並べます。

四半期売上高営業利益純利益営業利益率
2025年4-6月(前年1Q)1兆6,586億円2,907億円1,453億円17.5%
2025年7-9月1兆7,422億円3,382億円2,034億円19.4%
2025年10-12月1兆7,946億円2,553億円1,368億円14.2%
2026年1-3月(直近)1兆8,433億円1,584億円652億円8.6%

つまり今回の発表では、営業利益が前年同期の2,907億円を上回るかどうかがまず最初のチェックポイントになります。

ひとつ補足しておくと、この前年1Q(2025年4-6月)の2,907億円は、そのまた1年前(2024年4-6月)の3,039億円より減っている数字です。比較のハードルとしては、そこまで高くないとも言えます。

直近1-3月期の「▲27%」に驚かなくていい理由

上の表を見ると、直近の2026年1-3月期は純利益652億円(前年同期比▲27.1%)、営業利益率も8.6%と、ひときわ低く見えます。ここだけ切り取ると「失速したのでは」と不安になりますが、これはソフトバンクの毎年の季節性です

ソフトバンクの四半期ごとの営業利益率 1-3月期が毎年最も低い
1-3月期は端末販売や広告宣伝の費用が集中するため、例年いちばん利益率が低くなる。

2年分を並べると一目瞭然で、1-3月期は前の年も9.6%と低く、決して今年だけの異常ではありません。携帯電話の乗り換えが増える春商戦にあわせて端末の販売コストや広告費が期末に集中するため、毎年この四半期は薄くなります。

逆に言うと、今回発表される4-6月期は、例年いちばん利益率が高い四半期です。ここで前年並みの17〜19%が出るなら、通期計画は順調と見ていいことになります。

進捗率の目安は27〜28%

前期は1Qの営業利益2,907億円に対して通期実績が1兆426億円だったので、1Q時点の進捗率は27.9%でした。今期の通期計画1兆1,000億円に当てはめると、営業利益で3,000億円前後(進捗27〜28%)が「順調」の目安になります。

アスクルのサイバー攻撃が比較に効いてくる

もうひとつ、今回の1Qで気にしておきたいのがメディア・EC事業です。

グループ会社のアスクルが2025年10月にランサムウェア(身代金要求型のウイルス)に感染し、法人向け通販サイトの受発注が長期間止まりました。この影響でアスクル単体は2026年5月期に221億円の最終赤字となり、ソフトバンクのメディア・EC事業も前期は5つの事業で唯一の減益(▲184億円)になっています。

ここで比較の順番に注意が必要です。攻撃を受けたのは2025年10月なので、比較対象になる前年1Q(2025年4-6月)は「まだ被害が出ていない、きれいな四半期」です。一方、今回の1Q(2026年4-6月)はまだ回復の途上にあたります。

つまりメディア・EC事業だけは、前年同期比で見ると不利な条件で比べることになるということです。ここが弱く出ても、それは本業の通信が悪いということではありません。逆に、ここがすでに前年並みまで戻っていれば、会社が掲げる「アスクルの回復」計画(今期+9.8%)は前倒しで進んでいると読めます。

4. 今期(2027年3月期)の会社予想

今期は、2026年5月に発表された新しい中期経営計画「Activate AI for Society」(2027年3月期〜2031年3月期)の初年度にあたります。5年後の2031年3月期に売上高9兆円・営業利益1兆7,000億円・純利益7,000億円という目標を掲げています。

事業ごとの営業利益計画は次のとおりです。

事業2026年3月期 実績2027年3月期 会社計画
コンシューマ5,508億円5,600億円(+1.7%)
エンタープライズ1,924億円2,300億円(+19.5%)
メディア・EC2,404億円2,640億円(+9.8%)
ファイナンス863億円1,100億円(+27.5%)
ディストリビューション353億円個別開示なし
その他・成長投資▲626億円個別開示なし
合計1兆426億円1兆1,000億円(+5.5%)

「営業+5.5%なのに純利益+1.7%」の正体

ここで、上の表から簡単な引き算をしてみます。

  • 公表されている4事業(コンシューマ・エンタープライズ・メディアEC・ファイナンス)の計画を足すと 1兆1,640億円
  • ところが全社の営業利益計画は 1兆1,000億円
  • 差し引き ▲640億円 が、残りのディストリビューション事業と「その他・成長投資」の合計になる計算
  • 前期の同じ枠は「353億円 − 626億円 = ▲273億円」

つまり先行投資などの負担が、1年で約370億円ぶん重くなる計画ということです。会社はAI関連に3年間で1兆円の戦略投資枠を設け、大阪・堺でAIデータセンター(AXファクトリー)の整備を進めています。この費用が先に出ていくため、営業利益が+5.5%伸びても純利益は+1.7%しか伸びない計画になっています。

言い換えると、今期の数字の伸びが鈍いのは事業が悪いからではなく、意図的に投資を厚くしているからという見方ができます。もっとも、その投資がきちんと回収できるかは数年かけて確かめるしかありません。ここは楽観せずに見ておきたいところです。

なお、ソフトバンクは中間期(上期)の業績予想を出していません。四半期ごとの計画値がないので、進捗率は通期計画に対して見ることになります。

5. 配当の魅力

高配当株としてのソフトバンクを見るうえで、今期はひとつの節目です。

ソフトバンク9434の1株配当推移 2027年3月期は7年ぶりの増配
年8.6円を6期にわたって据え置いたあと、2027年3月期は8.8円へ増配予想。

ソフトバンクは2021年3月期から2026年3月期まで、6期連続で年8.6円という同じ金額を払い続けてきました。減配はしないけれど、増配もしない。「安定配当」の代表のような銘柄でした。

それが今期、年8.8円(中間4.4円+期末4.4円)へと7年ぶりに引き上げられる予定です。金額としては0.2円とわずかですが、新しい中期経営計画で「利益成長に合わせた継続的な増配を目指す」と方針が明記されたことのほうが重要です。これまでの「据え置き」から「利益が伸びたら配当も伸ばす」へと、姿勢が変わったことになります。

項目2026年3月期 実績2027年3月期 予想
年間配当8.6円8.8円
EPS(1株利益)11.4円11.5円
配当性向75.8%76.2%
予想配当利回り3.98%
連続増配6期据え置きのあと、今期増配予定
※利回りは2026年8月4日午前の株価220.9円で計算。

一方で、正直に書いておくべき点もあります。配当性向は76%と、かなり高い水準です。利益の4分の3以上を配当に回しているので、これ以上大きく配当を増やすには利益そのものを伸ばすしかありません。逆に業績が悪化したときの余裕も、その分だけ小さいということになります。

今回の1Q発表で配当予想が動く可能性は低いと思いますが、「増配路線の初年度が計画どおりに滑り出せているか」を確認する最初の機会ではあります。

6. 類似銘柄との比較

銘柄予想PERPBR予想配当利回り時価総額
ソフトバンク(9434)19.2倍4.01倍3.98%10.6兆円
NTT(9432)12.5倍1.26倍3.58%13.7兆円
KDDI(9433)―(利益予想未定)2.09倍2.92%11.5兆円
※2026年8月4日時点の株探・Yahoo!ファイナンス等に基づく概算。KDDIは2027年3月期の利益予想を未定としているため予想PERは算出できません(売上高6兆4,100億円・配当84円のみ公表)。

通信大手3社を並べると、ソフトバンクの位置づけがはっきりします。

  • 配当利回りは3社で最も高い(3.98%)
  • 一方でPERもPBRも3社で最も高く、株価としては最も割高な評価
  • 時価総額は3社で最も小さい

PBR4倍という数字は、通信インフラを持つ会社としてはかなり高い水準です。ソフトバンクは自社で保有する設備の比率が3社の中では低く、財務の見え方が違う面もありますが、それを差し引いても「安いから買う」タイプの銘柄ではないと考えたほうがよさそうです。利回りの高さと成長性への期待をどう評価するか、という銘柄です。

なお、NTTは8月6日、KDDIは8月7日に決算発表を予定しています。3社を並べて見ると業界の温度感がつかみやすくなります。

7. 保有状況

私はソフトバンク(9434)を保有株数分、保有しています。取得単価は144円です。

取得単価144円
株価(2026年8月4日午前)220.9円
評価損益約 +53%
取得単価に対する利回り6.11%(今期予想8.8円)

取得単価が144円なので、今期予想の8.8円で計算すると取得利回りは6.11%になります。いま買う人の利回り3.98%と比べると、早く買っていた分だけ受け取り効率が良くなっている状態です。

これは私が上手だったという話ではなく、買った値段は後から変えられないので、安く買えた分がずっと利回りとして残り続けるという高配当株の性質です。だからこそ、買う前にきちんと調べる意味があると思っています。

8. NISAとの相性

ソフトバンクは新NISAの成長投資枠の対象銘柄です。相性という観点では、次のように考えています。

  • 株価が200円台と手が届きやすい。100株で約2万2,000円なので、少額から始めたい人でも単元株で買える
  • 年2回(中間・期末)の配当があり、配当にかかる約20%の税金がかからない
  • 6期にわたって減配せず、今期から増配へ方針転換した実績は、長く持つ前提のNISAと噛み合う

一方で、注意しておきたい点もあります。配当性向が76%と高く、利益が落ち込んだときに配当を維持する余力は大きくありません。また、NISAは損失が出ても他の利益と相殺(損益通算)できないため、「値上がりも狙える割安株」というより「配当を長く受け取る枠」として位置づけるのが素直だと思います。

9. 個人株主としての見解

今回の1Q決算で、私が確認したいのは次の3点です。

  1. 営業利益が前年同期の2,907億円を上回ったか(進捗27〜28%=約3,000億円が順調の目安)
  2. メディア・EC事業がアスクルの影響からどこまで戻ったか(ここが弱くても本業の話ではない)
  3. AI・データセンターへの先行投資が、どのくらいのペースで費用に出てきているか

ソフトバンクは、通信という安定した土台の上でAIという不確実なものに賭けている最中です。今期の計画そのものが「営業利益は伸ばすが、投資を厚くするので純利益はほぼ横ばい」という、我慢の年の形をしています。

私はこの銘柄を、値上がりを取りにいく対象ではなく配当を受け取り続ける対象として持っています。その意味で、いちばん大事なのは四半期の利益が数%ぶれることではなく、6期の据え置きから増配へ舵を切った方針が本物かどうかです。今回はその最初の答え合わせにあたります。

PBR4倍という評価は、正直なところ割安とは言えません。いまから新規で買うなら、利回り3.98%という数字だけで飛びつかず、AI投資が利益として返ってくるかを何期か見てからでも遅くないというのが私の感覚です。すでに持っている立場としては、増配路線が続くかを静かに見ていくつもりです。

決算発表後に、実際の数字と照らし合わせたレポート記事を書く予定です。

10. 免責事項

本記事は個人投資家である筆者が、公開情報をもとに自身の記録・整理のためにまとめたものです。特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載した数値は決算短信・決算説明資料・株探・Yahoo!ファイナンス等の公開情報に基づく概算であり、正確性を保証するものではありません。また、本記事は決算発表前に作成しているため、記載内容は予想・見立てであり、実際の決算内容とは異なる可能性があります。投資に関する最終的な判断はご自身の責任でお願いいたします。

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