中部電力(9502) 2027年3月期1Qレポート ― 「未定」だった通期予想が判明、1Qは「期ずれ」で営業赤字転落

9502_report_eyecatch 決算速報レポート

2026年7月29日16時、中部電力(9502)が2027年3月期 第1四半期決算を発表しました。発表前の予測記事では「通期業績予想が異例の『未定』」という点を最大の注目点として挙げていましたが、今回ついに通期予想が開示されました。ただし中身は1Q自体の大幅減益と、初開示の通期計画も減益予想という、やや厳しい内容でした。答え合わせを兼ねて整理します。

1. 会社概要

中部電力は、愛知・岐阜・三重など中部地方を主な供給エリアとする大手電力会社です。小売事業を担う「中部電力ミライズ」、送配電ネットワークを担う「中部電力パワーグリッド」を分社化した持株会社体制で、東京電力と共同出資する火力発電・燃料調達会社「JERA」の持分法適用による投資損益も業績の重要な柱です。

2. 業績推移テーブル

決算期売上高営業利益経常利益純利益EPS
2026年3月期(実績)3兆5,460億円2,300億円2,911億円2,278億円301.57円
2027年3月期1Q(実績)8,258億円(+3.2%)▲250億円(赤字転落)271億円(▲74.1%)352億円(▲58.7%)46.60円
2027年3月期(通期予想・新規開示)3兆9,000億円(+10.0%)1,850億円(▲36.4%)1,600億円(▲29.8%)211.81円

※中部電力は日本基準を採用しており、営業利益に加え「経常利益」を開示しています(通期予想では営業利益の開示なし)。1Qは売上高こそ3年ぶりの増収でしたが、営業損益は赤字に転落、経常利益・純利益も大幅な減益となりました。

3. 決算ポイント(実績)

① 予測記事の最大の注目点「通期未定」がついに開示

予測記事の時点で「中東情勢の影響で合理的な見通しが困難」として通期予想が「未定」だった件は、今回の1Q決算で解消されました。開示された通期計画は、売上高3兆9,000億円(+10.0%、2年ぶりの増収)、経常利益1,850億円(▲36.4%、2年ぶりの減益)、純利益1,600億円(▲29.8%)です。会社は「中東情勢等の影響により、燃料価格や卸電力取引市場価格等は引き続き不透明」としながらも、一定の前提条件を置いて算定したとしています。

② 1Q減益の正体は「期ずれ」―ミライズが直撃

1Qの経常利益は前年同期比▲776億円の減益でしたが、その最大の要因はセグメント別に見ると明らかです。小売電力を担う「ミライズ」の経常損益が514億円の黒字から246億円の赤字に転落し、▲761億円と減益のほぼ全てを占めています。中部電力は燃料価格の変動を電力販売価格に転嫁する制度上、燃料市況と実際の損益計上に時間差(期ずれ)が生じますが、この期ずれが前年同期の「差益」から今回は「差損」に転じたことが最大の要因です(影響額▲450億円程度)。さらに中東情勢等による電源調達費用の増加や販売電力量の減少も重なりました。

中部電力セグメント別経常損益の増減
セグメント別 経常損益の増減(前年同期比、2027年3月期1Q)

期ずれの影響を除いた「実質ベース」で見ても、ミライズの経常損益は70億円→▲70億円とマイナスに転じており、電源調達コストの増加は一時的要因だけでは説明できない部分もある点は留意が必要です。

ミライズ経常損益の期ずれ除き比較
ミライズ(小売電力)の経常損益 ― 表面と「期ずれ除き」の比較

③ 予測記事で注目していたJERAは堅調を維持

予測記事では「JERAの持分法投資利益が1Qも高水準を維持しているか」を注目点の一つに挙げていましたが、結果はポジティブでした。JERAの経常損益は424億円→579億円と+155億円の増益(期ずれ除きでは204億円→599億円と+395億円程度の大幅増益)。原油高・円安に加え、卸電力取引市場での販売増益、海外・再エネ発電事業の収支向上が寄与しました。全体としては減益でも、JERAという収益源はむしろ勢いを増しているのが今回の特徴です。

④ パワーグリッド部門も設備費増で減益

送配電を担うパワーグリッド部門の経常損益は40億円→▲122億円と▲162億円の減益です。需給調整にかかる費用の増加や、物価上昇による設備関係費・諸経費の増加が主因で、エリア需要の減少に伴う託送収益の減少も響きました。電力インフラを支える固定費型のビジネスであるだけに、物価上昇の直接的な影響を受けやすい構造が改めて確認できます。

⑤ 株価は決算後のPTS取引で下落

決算発表は取引時間終了後の16時だったため当日の株式市場には反映されていませんが、決算発表後のPTS(夜間取引)では2,816円→2,660円程度まで下落する場面がありました。1Qの大幅減益という結果が、市場では素直にネガティブ材料として受け止められた形です。

4. 通期(2027年3月期)の会社予想

売上高3兆9,000億円(+10.0%)、経常利益1,850億円(▲36.4%、期ずれ除きでは2,840億円→1,900億円で▲33.1%)、純利益1,600億円(▲29.8%)、EPS211.81円です。会社の説明では、JERAの国内火力・ガス事業の収支向上を見込む一方、ミライズの電源調達費用増加、パワーグリッドの物価高による設備関係費増加が減益要因とされています。「中東情勢による電力需要への影響は現時点で限定的」としつつも、燃料価格や卸電力市場価格の不確実性を理由に、通期見通しに大幅な変化が生じた場合は速やかに開示するとしています。

5. 配当の魅力

決算期年間配当配当性向
2025年3月期60円22.4%
2026年3月期70円23.2%
2027年3月期(予想)70円(据え置き)33.1%(予想)
中部電力の配当推移(配当性向判明後)
「未定」だった配当性向が判明。70円据え置きで33.1%予想

予測記事の時点では通期業績が未定のため配当性向も「未定」でしたが、今回の通期予想開示により33.1%という数字が判明しました。減益予想の中でも配当70円は据え置きという方針は、予測記事で見立てた通りでした。電力会社は伝統的に配当性向が低め(20〜30%台)で推移する業種特性があり、今回の水準もその範囲に収まっています。

6. 類似銘柄との比較

銘柄PER(予)PBR配当利回り(予)
中部電力(9502)13.3倍0.67倍2.49%
関西電力(9503)8.9倍0.79倍3.25%
九州電力(9508)7.0倍0.88倍2.72%

数値は2026年7月29日(決算発表当日の取引時間中)時点の株探等に基づく概算です。通期予想の開示によって中部電力もようやくPERが算出可能になりましたが、13.3倍と大手電力3社の中では最も高い水準です。PBR・配当利回りは3社の中で最も見劣りする水準にとどまっており、今回の減益開示や期ずれの構造的な分かりにくさが評価に影響している可能性があります。

7. 保有状況

筆者は保有株数分の中部電力株を保有しています。取得単価は1,208円で、2026年7月29日終値2,816円に対して含み益は+133.1%です。予想配当70円に対する取得単価ベースの利回り(取得利回り)は約5.8%となります。

8. NISAとの相性

減益予想の中でも配当70円を据え置く姿勢は、非課税で配当を受け取れる新NISA(成長投資枠)との相性の良さを支える材料です。一方で、「期ずれ」という会計上の時間差要因や、中東情勢・燃料市況・持分法子会社JERAの業績など、外部要因に業績が左右されやすい構造は変わっていません。短期の増減益に振り回されず、配当の安定性を軸に長期保有で向き合うスタンスが引き続き向いている銘柄です。

9. 個人株主としての見解

予測記事で挙げた2つの注目点のうち、「通期予想の開示」は実現し、「JERAの高水準維持」もポジティブな結果でした。一方で1Q自体の大幅減益、特に営業赤字への転落は正直やや厳しい内容です。ただしその主因が「期ずれ」という一過性の会計要因と、電源調達費用の増加という比較的説明のつく要因である点は冷静に受け止めたいところです。今後は、①期ずれの反動が2Q以降どう出るか、②JERAの好調が続くか、③配当70円の据え置きが最後まで維持されるか、を引き続き見ていく予定です。

10. 免責事項

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。記事内の数値は決算短信・IR資料等の公表情報および各種情報サイトに基づく概算であり、正確性を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任において行っていただきますようお願いいたします。

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