本日2026年9月9日、保有銘柄の柿安本店(2294)が2027年4月期 第1四半期(5月〜7月)決算を発表します。本記事執筆時点(9月9日午前・市場取引開始前)ではまだ決算短信は開示されていないため、発表前の予測記事として、会社概要・業績推移・注目ポイントを整理しておきます。
柿安本店については2026年6月10日の本決算発表時にも予測記事・レポート記事を書いており(前回の本決算予測記事)、その際に触れた「配当性向100%超え」というテーマが、新年度に入った今回どうなっているかを中心に見ていきます。
1. 会社概要
柿安本店は三重県桑名市発祥の総合食品企業で、精肉事業・惣菜事業・和菓子事業・レストラン事業・食品事業の5つのセグメントを持っています。百貨店の地下食品売場を中心に「柿安ダイニング」などの惣菜店、松阪牛など高級精肉の販売、「口福堂」の和菓子、サービスエリアや商業施設のレストランを展開する、生活密着型の老舗企業です。
決算期は2023年4月期(14ヶ月の変則決算)から4月期に変更されており、今回発表されるのは新年度である2027年4月期の第1四半期(2026年5月1日〜7月31日)決算です。
2. 業績推移テーブル
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | EPS | 配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023年4月期 | 439.1億円 | 35.1億円 | 35.7億円 | 22.1億円 | 210.55円 | 85円 |
| 2024年4月期 | 370.5億円 | 22.0億円 | 22.3億円 | 14.0億円 | 133.67円 | 85円 |
| 2025年4月期 | 361.0億円 | 15.0億円 | 15.4億円 | 7.0億円 | 71.51円 | 85円 |
| 2026年4月期(実績) | 360.7億円 | 14.3億円 | 14.7億円 | 8.1億円 | 84.69円 | 85円 |
| 2027年4月期(会社計画) | 360.0億円 | 14.0億円 | 14.5億円 | 8.0億円 | 83.50円 | 85円(予) |
2023年4月期をピークに2期連続の大幅減益が続いた後、2026年4月期は営業利益・経常利益こそ小幅減益ながら、純利益は前期比+15.7%と回復しました(前期に計上した一時的な費用要因の反動などが影響したとみられます)。2027年4月期の会社計画は、売上高・利益ともに前期からわずかに減少する保守的な内容になっています。
3. 決算ポイント(予測)
- ①会社計画は全指標がわずかな減収減益の保守的な内容。売上高360.0億円(前期比▲0.2%)、営業利益14.0億円(▲1.9%)、経常利益14.5億円(▲1.6%)、純利益8.0億円(▲1.4%)、EPS83.50円(▲1.4%)と、大きな成長シナリオではなく「前期並みの水準を維持できるか」が計画の骨子です。
- ②配当性向100%超えが3期連続の見込み。2025年4月期118.9%→2026年4月期100.4%(実績)→2027年4月期101.8%(会社予想)と、稼いだ利益を上回る配当を3期続けて支払う計画になっています。1株配当は85円のまま、少なくとも2023年4月期から5期連続で据え置かれており、会社としては「減配は避けたい」という姿勢が読み取れます。
- ③1Q(5〜7月)の既存店売上は前年同期比+0.36%とほぼ横ばい。8月13日に開示された月次売上速報によると、既存店ベースの1Q累計売上高は76.85億円(前年同期76.57億円)とわずかにプラス。一方、閉店を含めた全店ベースでは84.51億円(前年同期86.63億円、▲2.45%)とマイナスになっており、この差は前期(2026年4月期)に実施した15店舗の純減(出店3・退店15)による構造的な影響とみられます。既存店が横ばいという点では、通期計画(売上高▲0.2%)に沿った滑り出しといえそうです。
- ④前期は不採算店舗の整理を進めたことで、精肉事業のセグメント利益が前期比+31.3%と質的な改善が見られました。今期も同様の店舗数最適化(生産性重視の経営)が続くのか、それとも出店攻勢に転じるのかも、決算短信の「出退店の状況」欄でチェックしておきたいポイントです。
4. 今期(2027年4月期)の会社予想
本日発表されるのは第1四半期(3ヶ月)決算であり、通期の会社計画自体は2026年6月10日の本決算発表時にすでに公表されています。今回の1Q決算では、この通期計画に対する進捗状況を確認することになります。
| 項目 | 2027年4月期 会社計画 | 前期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 360.0億円 | ▲0.2% |
| 営業利益 | 14.0億円 | ▲1.9% |
| 経常利益 | 14.5億円 | ▲1.6% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 8.0億円 | ▲1.4% |
| EPS | 83.50円 | ▲1.4% |
柿安本店は「年次での業績管理」を行う方針のため、上場企業には珍しく第2四半期(累計)の業績予想を開示していません。そのため通期計画に対する進捗を測る目安としては、前年同期の実績を参考にするのが現実的です。前期(2026年4月期)の第1四半期実績は、売上高86.6億円・営業利益2.4億円・経常利益2.5億円・純利益1.5億円(EPS15.40円)でした。1Qの純利益は通期実績(8.1億円)のおよそ18%にあたり、柿安本店にとって1Qは季節的に利益の薄い四半期であることがわかります。この構成比を当てはめると、今期1Qの純利益は1.4億円前後(EPS15円前後)が一つの目安になりますが、既存店売上が横ばい圏で推移している点を踏まえると、大きく崩れてはいないだろうというのが現時点の見立てです。
5. 配当の魅力
| 決算期 | 1株配当 | EPS | 配当性向 |
|---|---|---|---|
| 2023年4月期 | 85円 | 210.55円 | 40.4% |
| 2024年4月期 | 85円 | 133.67円 | 63.6% |
| 2025年4月期 | 85円 | 71.51円 | 118.9% |
| 2026年4月期(実績) | 85円 | 84.69円 | 100.4% |
| 2027年4月期(会社予想) | 85円 | 83.50円 | 101.8% |
1株配当は85円のまま少なくとも5期連続で据え置かれている一方、EPSは2023年4月期の210円台から大きく落ち込み、2025年4月期以降は配当額(85円)を下回る状態が続いています。これが配当性向100%超えの正体で、「利益を超えて配当している=タコ足配当」に見えますが、実際は自己資本比率79.6%(2026年4月期末)という健全な財務基盤を背景に、内部留保や手元資金を取り崩して配当を維持している状態です。下の図は、このEPSと配当85円のギャップを視覚化したものです。

財務的な体力があるうちは大きな問題にはなりにくいものの、配当性向100%超えが3期連続となる計画である以上、「利益がこのまま伸び悩めば、いずれ減配を検討せざるを得なくなる」というリスクは頭に入れておく必要があります。NISA口座で100株保有していると仮定した場合、配当が現行水準(85円)で維持されれば年間8,500円の配当金を非課税で受け取れる計算になります(あくまで一般的な試算例です)。
6. 類似銘柄との比較
柿安本店の置かれた状況を客観的に見るため、同じ「惣菜・食品小売」分野の上場企業と指標を比較してみます(数値は2026年9月8日時点の株探(かぶたん)データに基づく概算です)。
| 銘柄(コード) | 主な事業 | PER(予) | 配当利回り(予) | 配当性向(予) |
|---|---|---|---|---|
| 柿安本店(2294) | 百貨店惣菜・精肉・和菓子・レストラン | 30.8倍 | 3.31% | 101.8% |
| ロック・フィールド(2910) | 百貨店惣菜(RF1など) | 117倍 | 1.71% | 約200% |
| わらべや日洋ホールディングス(2918) | コンビニ向け弁当・惣菜製造 | 10.0倍 | 4.35% | 約43% |
| なとり(2922) | 乾き物・珍味・スナック菓子 | 17.2倍 | 1.51% | 約26% |
注目したいのは、デパ地下惣菜という同じ土俵で戦うロック・フィールドが、人件費や原材料費の上昇でさらに厳しい状況にあり、配当性向がおよそ200%(EPSの2倍を配当に回す計算)にまで達している点です。つまり「利益が出にくく配当性向が100%を超える」のは柿安だけの現象ではなく、百貨店内の対面販売型の惣菜業態そのものがコスト増の逆風を強く受けていることがわかります。一方、コンビニ向けの製造卸に強いわらべや日洋や、乾き物・珍味を扱うなとりは配当性向が20〜40%台と保守的で、PERも一桁台〜10倍台にとどまっています。同じ「食」でも、対面販売か製造卸か、扱う商材が生鮮系か日持ちする加工品かによって、コスト上昇への耐性にはっきり差が出ている業界構図が見えてきます。柿安のPERが30倍台とやや高めなのも、株価が過熱しているというより、EPSの水準そのものが落ち込んでいることの裏返しです。
7. 保有状況
私は柿安本店を取得単価2,274円で保有株数分保有しています。2026年9月8日終値は2,570円で、含み益は+13.0%程度です。配当利回りは取得単価ベースで約3.74%、現在値ベースで約3.31%となっています。利回りの数字自体は魅力的ですが、上述の通り配当性向が高水準にあるため、数字以上に今後の配当方針・業績動向には注意を払っておきたい銘柄です。
8. NISAとの相性
柿安本店は配当利回り3%台で、これまで減配こそしていないものの、配当性向100%超えが3期連続となる見通しである点は、安定配当株として見るにはやや心もとない状況です。NISAは非課税メリットが大きい分、減配や株価下落が起きた場合の機会損失も意識されやすいため、まずは本日発表される1Q決算で「既存店の回復基調が続いているか」「通期計画からの上振れ・下振れの兆候がないか」を確認したうえで、追加投資の是非を判断したい銘柄だと感じています。
9. 個人株主としての見解
正直なところ、配当性向が3期連続で100%を超える計画である以上、いつまでもこの状態を続けられるわけではないという緊張感は持っておいた方がよいと考えています。ただし、自己資本比率79.6%という財務基盤の厚さ、そして惣菜・精肉という生活密着型の事業は需要そのものが消えてなくなるものではない点を踏まえると、今すぐ減配に踏み切る差し迫った状況ではないとも感じています。
今回の1Q決算で重要なのは、単月の数字そのものよりも「不採算店舗の整理による質的な改善(精肉事業の収益性向上など)が今期も続いているか」「既存店売上の横ばい基調が通期を通じて維持できそうか」というメッセージだと捉えています。発表後は答え合わせも兼ねて決算レポート記事を出す予定です。
10. 免責事項
本記事は個人投資家である筆者の見解・記録をまとめたものであり、特定の銘柄の購入・売却を推奨するものではありません。記載した数値は記事執筆時点で入手できる公開情報・予測に基づいており、正確性を保証するものではなく、また将来の業績・配当を保証するものでもありません。投資判断はご自身の責任において、最新のIR情報をご確認の上で行ってください。


コメント