2026年7月29日、コマツ(6301)が2027年3月期 第1四半期決算を発表します。今回は「発表前の予測記事」として、会社が既に公表している情報から読み解けるポイントを整理します。
1. 会社概要
株式会社小松製作所(コマツ)は、油圧ショベルやブルドーザなどの建設機械で世界2位のシェアを持つ日本を代表するグローバル企業です。世界170以上の国・地域で事業を展開し、売上高の9割以上を海外が占めます。2025年4月からは2028年3月期をゴールとする中期経営計画「Driving value with ambition」をスタートし、①イノベーションによる価値共創、②成長性と収益性の追求、③経営基盤の革新、の3本柱を掲げています。

2. 業績推移テーブル
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 税引前利益 | 純利益 | EPS |
|---|---|---|---|---|---|
| 2024年3月期 | 3兆8,651億円 | 6,072億円 | 5,757億円 | 3,934億円 | 416.00円 |
| 2025年3月期 | 4兆1,044億円 | 6,571億円 | 6,048億円 | 4,396億円 | 473.44円 |
| 2026年3月期(実績) | 4兆1,328億円(+0.7%) | 5,673億円(▲13.7%) | 5,373億円(▲11.2%) | 3,764億円(▲14.4%) | 413.90円 |
| 2027年3月期(会社予想) | 4兆1,180億円(▲0.4%) | 5,080億円(▲10.5%) | 4,660億円(▲13.3%) | 3,180億円(▲15.5%) | 352.90円 |
※コマツは米国会計基準を採用しており、日本基準の「経常利益」に相当する項目はなく「税引前当期純利益」を掲載しています。前期(2026年3月期)は売上高こそ過去最高を更新しましたが、利益は2期ぶりの減益でした。
3. 決算ポイント(予測)
① 2期連続の減収減益計画、理由は米国関税政策
今期(2027年3月期)の会社予想は、売上高4兆1,180億円(▲0.4%)、営業利益5,080億円(▲10.5%)、純利益3,180億円(▲15.5%)と、前期に続き2期連続の減益計画です。短信では「建設機械・車両部門は、販売価格の改善やコスト低減の取り組みを進めるものの、米国の関税政策の影響を含む原価の上昇に加え、固定費の増加や販売減により減益となる見通し」と明記されています。世界的な建機大手であるコマツにとっても、米国の関税政策が収益を圧迫する構造になっている点は要注目です。
前期の為替前提は1米ドル=150.5円でしたが、今期は150.0円とほぼ横ばいの前提です。円安効果に頼らず、関税コストの上昇分を価格転嫁とコスト削減でどこまで吸収できるかが今期のカギになります。
② 地域別で明暗―鉱山機械は資源国が強く、アジアが弱い
前期の建設機械・車両部門を地域別に見ると、明暗がはっきり分かれました。銅需要が堅調なチリなど中南米(+13.7%)や、鉱山機械の販売が伸びたアフリカ(+15.9%)は大きく増収した一方、インドネシアの石炭価格低迷で鉱山機械需要が落ち込んだアジアは▲32.9%の大幅減収、不動産市況が低迷する中国も▲5.5%となりました。中近東は大型インフラ需要で堅調でしたが、4Qに入って中東情勢の影響で失速し、通期では▲1.7%となっています。

コマツの業績は資源価格・地政学リスクという世界経済の縮図のような構造になっており、1Q決算でもどの地域が牽引役・重荷になっているかが引き続きの注目点です。
③ セグメント別:本業の建機は苦戦、金融・産業機械は堅調
3つの報告セグメントのうち、売上の9割超を占める中核の「建設機械・車両」部門は前期セグメント利益が▲18.0%と大きく落ち込みました。一方、割賦・リースなど金融サービスを提供する「リテールファイナンス」部門は債権残高の拡大により+24.4%の増益、自動車向け大型プレスや半導体向けエキシマレーザー関連事業を展開する「産業機械他」部門も+38.5%の増益と、非建機セグメントが本業の落ち込みを下支えする構図でした。今期は建機部門が▲10.4%の減益予想である一方、リテールファイナンス・産業機械他はいずれも小幅な減益予想にとどまっており、事業ポートフォリオの分散効果が引き続き働くかが注目点です。
④ 1Qの目安―前年同期の実績と比較する
コマツは半期・四半期の業績予想を開示していないため、進捗率という通常の見方はできません。今回の1Q(2026年4-6月)を評価する際の目安は、前年同期の実績です。前年1Q(2025年4-6月)は売上高9,095億円、営業利益1,404億円、税引前利益1,313億円、純利益912億円、EPS99.1円、売上高営業利益率15.4%でした。通期計画(営業利益5,080億円、前期比▲10.5%)から単純に逆算すると、1Qの営業利益は前年の1,404億円から1割前後減った水準が一つの目安になります。これを上回るか下回るかで、通期計画の達成に向けたペースを判断できそうです。
4. 今期(2027年3月期)の会社予想
売上高4兆1,180億円(▲0.4%)、営業利益5,080億円(▲10.5%)、税引前利益4,660億円(▲13.3%)、純利益3,180億円(▲15.5%)の減収減益計画です。前提為替レートは1米ドル=150.0円、1ユーロ=174.0円、1豪ドル=106.0円。なお、2026年4月28日の取締役会で自己株式の取得・消却が決議されており、EPS計画にはその影響は織り込まれていない点に留意が必要です。
5. 配当の魅力
| 決算期 | 年間配当 | 配当性向 |
|---|---|---|
| 2025年3月期 | 190円 | 40.1% |
| 2026年3月期 | 190円 | 45.9% |
| 2027年3月期(予想) | 190円(据え置き) | 53.8%(予想) |

コマツの配当方針は「連結配当性向を40%以上とする」というシンプルなものです。前期・今期と純利益が2期連続で減少する中でも、会社は年間配当190円を3期連続で据え置く計画としています。一見すると「配当は変わらず安定」に見えますが、実態は利益が減る中で金額を据え置いているため、配当性向は40.1%→45.9%→53.8%予想へと急速に上昇しています。方針である「40%以上」を大きく上回る水準まで還元姿勢を強めている格好で、株主還元を重視する経営姿勢の表れと言えます。ただし、この先も減益が続くようであれば、配当性向にはいずれ限界が来る可能性もある点は認識しておきたいところです。
6. 類似銘柄との比較
| 銘柄 | PER(予) | PBR | 配当利回り(予) |
|---|---|---|---|
| コマツ(6301) | 18.6倍 | 1.69倍 | 2.86% |
| 日立建機(6305) | 14.2倍 | 1.26倍 | 3.55% |
| クボタ(6326) | 15.0倍 | 1.17倍 | 1.86% |
数値は2026年7月24日時点の株探等に基づく概算です。建機・農機大手3社の中では、コマツのPER・PBRがやや高めで、市場は減益局面でも相対的に高い評価をつけています。世界シェア2位というブランド力とグローバル分散の効いた事業基盤が評価されている一方、配当利回りは3社の中では日立建機に劣ります。割安さよりも事業基盤の安定感・規模で選ばれる銘柄という位置づけです。
7. 保有状況
筆者は保有株数分のコマツ株を保有しています。取得単価は3,171円で、2026年7月24日終値6,642円に対して含み益は+109.5%(2倍超)です。予想配当190円に対する取得単価ベースの利回り(取得利回り)は約6.0%となります。
8. NISAとの相性
配当性向40%以上という明確な還元方針と、減益下でも配当を据え置く実績は、非課税で配当を受け取れる新NISA(成長投資枠)との相性が良いポイントです。一方で、業績は為替・資源価格・関税政策など外部環境の影響を強く受けやすく、株価も市況によって振れやすい銘柄です。長期保有を前提に、配当の安定性と業績サイクルの両方を見ながら向き合うのが向いているでしょう。
9. 個人株主としての見解
今回の1Q決算で筆者が注目しているのは、①米国関税政策のコスト影響が想定通りのペースで顕在化しているか、②中南米・アフリカの鉱山機械需要(銅価格に連動)が引き続き堅調か、の2点です。世界的な建機大手であるコマツの決算は、資源価格や地政学リスクなど世界経済の縮図としても読める面白さがあります。減益計画そのものはすでに織り込み済みの情報なので、1Qでは「計画通りのペースか、上振れ・下振れの兆候はあるか」を冷静に見ていく予定です。
10. 免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。記事内の数値は決算短信・IR資料等の公表情報および各種情報サイトに基づく概算であり、正確性を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任において行っていただきますようお願いいたします。


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