【追記】同じ運用報告書を「数字だけ」で3分で振り返るデータ版の記事も公開しました。お時間のない方はそちらからどうぞ。
私も保有しているeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)、通称「オルカン」の第8期運用報告書(作成対象期間:2025年4月26日〜2026年4月27日)が届きました。運用報告書は「届いても読まずに終わる」書類の代表格ですが、実は見るべきポイントは数か所だけ。今回は初心者の方向けに「どこを見ればいいか」も含めて、中身をかみ砕いて紹介します。結論を先に言うと、成績・コスト・資金流入のどれをとっても良好で、安心して持ち続けられる内容でした。
成績:+48.0%。ベンチマークもきちんと上回った
| 項目 | 第8期 |
|---|---|
| 基準価額 | 24,270円 → 35,924円(+48.0%) |
| ベンチマーク(MSCI ACWI・配当込み円換算) | +47.8%(ファンドが0.2%上回る) |
| 分配金 | 0円 |
| 純資産総額 | 5兆3,176億円 → 11兆2,878億円(ほぼ倍増) |
1年で+48.0%という、設定以来でも突出した「当たり年」でした。インデックスファンドの通信簿としてまず見るべきは、ベンチマーク(連動をめざす指数)との差です。オルカンは指数の+47.8%に対しファンドが+48.0%と、0.2%上回りました。差の主因は配当にかかる税率の違いなどによるもので、「指数どおりに運用できています」という合格印です。
上昇の背景は、主要国の利下げと堅調な企業決算による世界的な株高、そして円安(対ドル・ユーロなど)です。期中はイラン情勢の緊迫で下がる場面もありましたが、停戦交渉の進展期待などから反発して期間を終えました。意外かもしれませんが、中身別で最も上がったのは新興国株式(+67.7%)で、日本株(+47.0%)や先進国株(+45.7%)を上回っています。「全世界に分散しておく」効果が出た1年とも言えます。
ただし「+48%」に慣れてはいけない

運用報告書には最近5年間の騰落率も載っています。並べると+15.5%→+3.6%→+36.7%→+1.1%→+48.0%。つい昨年(第7期)はほぼ横ばいの+1.1%だったわけで、リターンは年によって大きくばらつきます。+48%の直後は「投資すれば毎年これくらい増える」と感覚が狂いやすいタイミングです。良い年のあとも悪い年のあとも、やることは同じ——淡々と積み立てを続ける。これが長期投資の基本だと、あらためて確認しておきたいところです。
「分配金0円」は損ではない――むしろオルカンの強み
報告書には「分配金:0円」とあります。高配当株の記事を書いている私が言うのも面白い話ですが、これは「出せないから0円」ではなく「出さずに増やす」という設計で、インデックスの長期積立とは最高に相性のいい方針です。ここは初心者の方が誤解しやすいポイントなので、図にしました。

運用で得た利益を分配金として受け取ると、その時点で税金が引かれ(課税口座の場合)、受け取った分は雪だるまの外に出てしまいます。オルカンは利益をファンドの中でそのまま再投資するため、税金で目減りさせずに「利益が利益を生む」複利の効果を最大限に使えます。第8期の利益もすべて基準価額の上昇(24,270円→35,924円)に含まれています。分配金相当の楽しみは、将来必要になったときに必要な分だけ取り崩せばよい、という考え方です。
コストと規模:総経費率0.07%、純資産は11兆円超に
1年間の運用・管理にかかった費用の合計(総経費率)は年率0.07%。100万円分保有して年700円ほどの負担で、業界最低水準を維持しています。1万口あたりの費用明細を見ても合計26円と、報告書のこのページは毎年「安い」を確認するだけで終わります(それが良いファンドの証拠です)。
純資産総額は1年で5.3兆円→11.3兆円とほぼ倍増しました。期中の新規購入(追加設定)は約1兆1,492億円に対して、解約は約1,981億円。入ってくるお金が出ていくお金の6倍近くあり、新NISA以降の積立人気が続いていることがわかります。規模が大きく資金流入が安定しているファンドは、運用コストの低減や繰上償還(ファンドが途中で終了してしまうこと)のリスクの低さにつながるので、保有者には安心材料です。
中身の確認:米国7割の先進国株を軸に、約2,500銘柄へ分散
| 組入ファンド | 比率 | 期中騰落率 |
|---|---|---|
| 外国株式(先進国) | 83.0% | +45.7% |
| 新興国株式 | 12.0% | +67.7% |
| 日本株式 | 5.0% | +47.0% |
組入上位はマイクロソフト(4.6%)、アップル(4.5%)、エヌビディア(4.3%)と米国の大型テック企業が並び、先進国部分の約73%は米国です。新興国部分の筆頭は台湾のTSMC(9.2%)。日本株部分は三菱UFJ、トヨタ、日立などで、先進国・新興国・日本を合わせた組入銘柄数は約2,500に上ります。1本で「世界の株式市場まるごと」を持てるのがオルカンの本質で、その構成が今期も忠実に維持されていることが確認できました。
個人投資家としての見解――高配当株とインデックスは両輪
私は普段、高配当の個別株を中心に記事を書いていますが、オルカンのようなインデックスファンドも並行して積み立てています。役割がまったく違うからです。高配当株は「いま受け取れる配当」という現金の流れを作ってくれる一方、オルカンは「受け取らずに増やす」ことに徹して、将来の資産の土台を静かに太らせてくれます。どちらが正解ということではなく、両方を持つことで景気の波にも心の波にも強くなれる、というのが実感です。
今回の報告書で確認できたのは、①指数にきちんと連動している、②コストは最低水準のまま、③資金流入も潤沢——つまり「何も心配せず持ち続けてよい」ということです。唯一の注意点は、+48%という数字に慣れないこと。この追い風には円安も含まれており、来年も同じとは限りません。+1%の年が来ても淡々と。それだけ守れれば、この報告書は満点の内容だったと思います。
※本記事は個人投資家による情報整理・意見であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記載した数値はeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)第8期交付運用報告書(三菱UFJアセットマネジメント)に基づく概算です。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。


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