【コラム】その増配、円安のおかげ?― VYM・HDV・SPYDの6月配当を「ドルの実力」と「為替」に分解する

VYM・HDV・SPYDの6月配当を「ドルの実力」と「円安の追い風」に分解するコラムのアイキャッチ。その増配、本物です。VYM+13.7%、HDV+1.3%、SPYD+8.6%(ドルベース) コラム

米国高配当ETFの「年4回」の配当のうち、2回目にあたる6月分が出揃いました。VYM・HDV・SPYDを保有する私たちの多くが、明細を見てこう感じたはずです。「去年より増えてる。……でも、これって円安のおかげでは?」

実は私自身も、明細を眺めただけでは判断がつきませんでした。円での受取額は為替で膨らんだり縮んだりするので、「本当に増配されたのか」が見えにくいのです。そこで今回は、6月の配当を「ドルの実力」と「円安の追い風」に分解してみます。同じモヤモヤを抱えている方の一助になれば幸いです。

1. 先に結論 ― 3銘柄とも「本物の増配」。ただし中身は三者三様

結論から言うと、VYM・HDV・SPYDの6月配当は、為替を抜いたドルベースでも3銘柄すべて前年同月を上回りました。つまり「円安のおかげだけ」ではありません。ただし増え方の中身は銘柄によって大きく違い、そこにこそ今回の学びがあります。

2. 分解の考え方 ― 受取額は「掛け算」でできている

私たちが受け取る円の配当は、次のシンプルな掛け算で決まります。

円での配当受取額はドル建て配当×為替レートの掛け算で決まることを示す図解。増えた理由はドルの増配(銘柄の実力)と円安(為替の追い風)の2つに分解できる
円の受取額=ドル配当×為替レート。「増えた理由」は2つに分解できる

だから「増えたかどうか」を正しく知るには、掛け算をほどいて、①ドル建ての配当そのものが増えたのか(銘柄の実力)と、②為替レートが円安に動いたのか(追い風)を別々に見ればよい、ということになります。

3. ①ドルの実力 ― 6月配当の前年同月比

ETF2025年6月2026年6月ドルベース増減
VYM0.8617ドル0.9795ドル+13.7%
HDV0.1826ドル0.1851ドル+1.3%
SPYD0.5000ドル0.5429ドル+8.6%

※1株当たり分配金。データソース(stockanalysis.com等)の表示に基づきます。HDVは調整後表示のためお手元の明細と桁が異なる場合がありますが、伸び率の比較には影響しません。

VYMの+13.7%は見事のひとことです。SPYDも+8.6%としっかり増配。一方でHDVは+1.3%と、ほぼ横ばいでした。この時点ですでに、3銘柄の「実力の差」が見えてきます。

4. ②為替の追い風 ― 1年で約10%の円安

次に為替です。配当を受け取った時期のドル円レートは、昨年6月が1ドル≒145円前後、今年6月は159〜162円のレンジで、およそ160円前後でした。つまり為替だけで約+10%、円での受取額が押し上げられた計算になります。これは3銘柄に共通で等しくかかる「ゲタ」です。

5. 掛け算の答え合わせ ― 円ベースの増え方と、その内訳

ETF①ドルの実力②為替の追い風円での増え方(①×②)
VYM+13.7%約+10%約+25%
HDV+1.3%約+12%
SPYD+8.6%約+20%
VYM・HDV・SPYDの6月配当の円ベース増加率を、ドルの増配分と円安分に分解した積み上げ棒グラフ。VYMは+25%のうち半分以上がドルの実力、HDVは+12%のほとんどが円安の追い風
円ベースの増え方を「ドルの実力」と「円安の追い風」に分解すると、銘柄の個性が見える

この図が今回いちばんお伝えしたかったことです。円ベースではどれも2桁増で「全部好調」に見えますが、分解すると――

  • VYM:+25%のうち半分以上が「ドルの実力」。円安が止まっても増配は残る、最も筋肉質な増え方
  • SPYD:実力+8.6%と追い風+10%のバランス型
  • HDV:+12%のほとんどが円安のおかげ。もし為替が145円に戻れば、受取額は昨年並みに逆戻りする計算

※①と②の掛け合わせ部分(相乗効果)は、簡便のため為替側に含めています。

6. 参考 ― 上半期(3月+6月)の累計でも3銘柄とも増配

ETF2025年 上半期2026年 上半期ドルベース増減
VYM1.7117ドル1.8412ドル+7.6%
HDV0.3416ドル0.3536ドル+3.5%
SPYD0.9189ドル0.9928ドル+8.0%

1回分だけだと増減がぶれやすいETF(特にSPYDは変動が大きいことで有名です)も、半期で均せば3銘柄とも前年を上回っています。ドルベースの配当は、着実に育っていると言ってよさそうです。

7. 私たちが持ち帰りたい3つのこと

  1. 円の明細だけで一喜一憂しない。受取額は「ドル配当×為替」の掛け算。増えた理由を分解して初めて、銘柄の実力が見えます。
  2. 円安の追い風は「借り物」と考える。為替は行って戻る波のようなもので、いつか円高で「返す」ことがあります。当てにしてよいのはドルベースの増配だけです。
  3. 逆に、円高の年に受取額が減っても慌てない。分解してみたらドル配当は増えていた——ということも起こります。売る・持つの判断は、必ずドルの実力で。

私自身、今回この分解をやってみて「HDVの増え方はほぼ為替だった」と初めて腹落ちしました。円安の今は、どの銘柄もよく見えてしまう時期です。だからこそ、ドルの実力を確かめる習慣が、次の円高局面で私たちを支えてくれるはずです。投資は才能じゃない、選択だ——為替の波に流されず、実力で選び続けたいものです。

免責事項

本記事は筆者個人の投資記録・見解を共有するものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記載の数値は執筆時点の公開情報(各ETFの分配金履歴・為替相場)に基づく概算を含み、その正確性を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。

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